哲学・思想

飢餓状態になると本能が目覚める

投稿日:2018-05-29 更新日:

二十代の頃、自殺願望が強かった。

バイトの面接に落ちたりとか、他の人が当たり前のようにこなしている事を僕だけが出来なかったりした時とか、よく死にたくなった。

二十代の半ばくらいに、自分の不甲斐なさにつくづく嫌気がさした僕は、何もかも捨てて失踪した。

詳細はこちら→ 失踪記

貯金をおろして、当時住んでいた仙台を発ち、東京、大阪、神戸、姫路、岡山を経て、最終的に鳥取にたどり着いた。

鳥取の砂丘に着いた時は服も身体もひどい汚れ方で、明らかに不審者みたいな感じになっていた。

手持ちの金がほとんどなくなり、もうどこにも行く当てがなかったので、コンビニで菓子パンを買って食べたのを最後に「いよいよここで野垂れ死にだな……」と、覚悟を決めた。

日中の鳥取砂丘は観光客が多くて人目につくので、野垂れ死にする前に通報されたら面倒だな、と思い、近くの道路沿いにある岩屋に身を隠した。

空腹を感じつつ、寝たり起きたりを繰り返していると、だんだん時間の感覚がなくなって、空腹感も増してきた。

外から差す明るさで日中と夜の区別くらいはつくけど、今が何時で今日で何日目なのかは分からなくなっていた。

空腹感が次第に耐え難いものになってきて、喉の渇きもひどく、体を動かすのがかなり辛くなっていた。

これが飢餓ってヤツなのかな?

そう感じた時から、頭の中が食べ物の事しか考えないようになっていて、好きな食べ物、嫌いな食べ物、よく食べていた物、まだ食べた事がない物などを、とにかく次々と連想していた。

アレが食いたい! コレが食いたい! とにかくなんでもいいから食いたい!

気づくと食べ物に対する執着が死にたい気持ちを完全に払拭して、食欲に精神が支配されているような状態になっていた。

僕はその時、自分が自由意志だと思っているものとは違う、どう足掻いても逆らえない本能をはっきり理解した気がした。

人はおそらく飢餓状態になると、意志では到底コントロールする事が出来ない本能が顕在化するんだろう。

たとえどんなに死を望んでいても、肉体のどこかに宿る本能が脳に“生きろ”と指令を出して、細胞たちに死を回避するためのアクションを起こさせる。

何か食べられるんだったら何でもする!

食べ物さえあったらもう他に何もいらない!

肉体が徐々に衰弱して意識が朦朧としていく中で、見苦しいくらいに生に対する執着が湧いていた。

気づくと最後の力を振り絞るように岩屋を出て、足を引きずりながら公衆電話を探して歩いていた。

公衆電話から実家に電話したら、声が出なかった。

電話に出た父親に「金がないから助けてくれ」と言ったけど、ずっと飲まず食わずだった僕の声は掠れ過ぎて全然声にならず、仕方がないので交番に助けを求めた。

交番で水をもらって落ち着いてから、また実家に電話して、父親と警察の人に実家まで帰る段取りをつけてもらった。

警察の人には散々怒られて、父親には散々心配されたけど、それでもその時の僕には生きて帰れる喜びと、実家に帰ってから飯を食う事しか頭になかった。

死を逃れる時の本能はそれくらい人間的に浅ましくて醜いものだけど、おかげで僕はそれ以来一度も死にたいと思わなくなった。

死にたいと思わなくなったというより、どうせ死ねないんだから四の五の言わずに生きている感じ。

だから他の人の死にたい気持ちを別に悪いとは思わない。

でもその死にたい気持ちはきっと嘘だと思う。

これからも自殺する人はいっぱいいるだろうけど、本当に死にたいと思っている人はほとんどいないだろう。

嘘だと思うなら僕がそうだったように餓死するまで黙って寝ててみればいい。

そしたら絶対に本能が目覚めて命を生かす方向に仕向けて来るはず。

もしそのまま餓死で自殺する事が出来たら、その自殺願望は本物だ。







-哲学・思想
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

宇宙と地球の生命と人間の細胞はフラクタルである

飛行機で沖縄に行く時、上空から沖縄のキレイな海を眺めていたら、無数に漂う海の渦潮と宇宙の銀河の数は比例しているな、と直感的に思った。 閃きで分かった事だから科学的根拠はまったくないけど、夜空に輝く宇宙 …

アスペルガーとして生きる意味

ネットの診断結果によると、僕はグレーゾーンアスペルガー(発達障害)に該当する。 僕自身も自覚していた事なので結果に関しては納得している。 むしろそうだと分かった事により自分についての理解が深まったので …

感受性、応答せよ!現代アートもゲルニカも所詮無力

地下鉄の駅でたまたま立ち寄った現代アートの展示会を眺めてみた。 ほどよいスペースで何かを主張する立体と映像作品。 相変わらずわけがわからず、見た目には退屈だった。 でも僕はこれらが何を伝えようとしてい …

有名人の鬱や自殺報道を受けて想う事

有名人の鬱や自殺の報道があると、大勢の人が励ましの声や心配する声を上げる。 でも僕たちは所詮有名人のパブリックイメージしか知らない赤の他人なのであって、一方的に親近感を抱いて励ましたり心配したりしても …

事態を好転させるために必要なもの

これまでの人生で、神に祈りが通じて奇跡が起き、それによって何か問題が解決した事は一度もない。 ただ何か問題が発生してそれが解決に向かう時、神への祈りに通じるような素直な気持ちとか、決意みたいなものを示 …

祐喜代(sukekiyo)

PROFILE

PROFILE

祐喜代(SUKEKIYO)

大阪在住

社会に属しながら世捨て人として人生を謳歌するために、思索と創作表現などをしています。

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

嗤う狐の藝術

祐喜代『星空文庫』ページ

嗤う狐のYOUTUBEチャンネルはこちら↓

ネットSHOP

SUKEKIYOオリジナルアートSHOP

『AMS』はこちら↓

https://ams.base.shop/

 

スポンサーリンク