オカルト・スピリチュアル 哲学・思想

子供たちに教えてもらった大事な事

投稿日:2018-07-20 更新日:

東京の生活をやめて地元に帰り、一年くらい妹夫婦の家に居候していた。

甥っ子が二人いて、2年くらい一緒に過ごした。

その間、僕たち大人が良かれと思って子供たちにあれこれ教育的指導をしていく中で、逆に二人から僕たち大人が人として大事な事を教わる時が多々あった。

当時5歳の長男は妹の旦那に似て、おっとりした性格をしている。

本やお絵描きが好きで、あまり争い事を好まない子だった。

3歳の弟は妹に似て、とにかく活発でよくしゃべる小生意気なところがあった。

気性が荒く、5歳の長男とオモチャやお菓子の取り合いとかになると、いつも先手を打って5歳の長男に立ち向かい、喧嘩をしていた。

二人の喧嘩を眺めていると、5歳の長男がほぼ一方的に3歳の子に攻められる形で負ける事が多い。

はじめは抵抗するんだけど、噛んだり髪を掴んだりして何が何でも勝とうとする弟の勢いに圧倒されてしまうのか、すぐに泣いて降参する。

そんな時、妹夫婦は「お兄ちゃんなんだから、弟なんかに負けんなよ。たまにはバシッと反撃してお兄ちゃんの強さを見せてやれっ」と5歳の長男を叱咤激励する。

それでも5歳の長男は、ほとんど手を出さずになぜか負け続けた。

戦いたくないのに、本気なんか出せないよ

自分が本気を出したらただの弱い者イジメになる

5歳の長男の本心はきっとそんな感じだったと思う。

たまに5歳の長男と戦隊ごっこなんかをして一緒に遊ぶと、おっとりしているのに、そこそこ力強いパンチやキックを僕に撃ってくる。

だから決して弱くはない。

でも弟が相手の時は、お兄ちゃんとしての自覚と配慮があるからか、弟がケガをしないように手加減していた。

手加減しているうちに疲れて降参する。

それくらい相手に気を遣える優しい子だ。

悔しいけど、ボクはお兄ちゃんだから仕方ががない

二人が喧嘩する度に僕は5歳の長男からいつもそんな葛藤を読み取っていた。

ある日、3歳の弟の強さを買った妹夫婦が、3歳の弟に柔道を習わせる事になった。

知り合いの監督さんのところで練習させるうちに強くなり、最年少クラスの大会に出る事になった。

身内以外の人とはじめて試合をする。

でもこの大会には3歳の弟と同じ年齢の男の子が他にいなくて、対戦相手になった子は同じ年齢の女の子だった。

傍から見ても余裕で勝てる相手。

しかし結果は両者一歩も動かず、試合放棄と見なされて、どちらも負けとなった。

妹も周りのギャラリーもはじめはみんな「女の子かぁ、余裕の相手だなぁ」と笑っていた。

僕は後日その試合の様子を妹が撮ったスマホの動画で観たけど、その場にいた大人たち全員が異様に見えた。

3歳の弟も対戦相手の女の子も今回がはじめての試合。

相手の女の子にしたら今回がはじめての試合なうえに、戦う相手が気性の荒らそうな男の子だ。

もう試合前から緊張と恐怖で大泣きしていた。

妹とギャラリーたちが「可愛そうだけど、試合だから手加減するなよ」とか「どっちも頑張れ」とか言っていた。

当前というか、大会にありがちな言葉で畳の上の小さい二人を煽っていた。

3歳の弟は泣いている対戦相手を前にして明らかに戸惑っている様子だった。

なぜ泣いている女の子と戦わなければいけないのか?

その意味を必死で探っているようだった。

審判が試合開始の合図を出しても二人はそのまま一歩も動かない。

3歳の弟は大人たちだけが異様な熱気の中でワァワァー叫んでいる状況を困惑しながら見渡していた。

そして「やれっ」「行けっ」「倒せっ」の言葉に時折突き動かされそうになる自分を必死で押さえていた。

何やってんの!? 攻めなさい! 試合だよっ、戦わないと負けになっちゃうんだよっ

何もしない3歳の弟に妹たちとギャラリーの檄が飛ぶ。

でも相手の女の子はもうすでに泣いていて、戦意を喪失している。

戦わなくても結果は明らかだった。

ボクの方が全然強いよ

だから戦わなくてもいいでしょ?

ボクの勝ちでいいんじゃないの?

大人たちにヤイヤイ言われる状況の中で、3歳の弟が小さい体を震わせながらそう言っているように僕には見えた。

女の子よりも力の強い男の子としての自覚と配慮。

大人たちはそれを誰も教えていない。

3歳の弟は自分の内側から沸き起こる良心を盾に、大人たちの都合で出来たおかしなルールと戦っていた。

5歳の長男がいつも負けてくれた理由を、この時3歳の弟も理解したのかもしれない。

自分も今同じ立場になって、お兄ちゃんの葛藤を味わっている。

3歳の弟は、大人たちの異様な熱気に押し潰されて途中から泣きだしたけど、それでもそのまましっかりと立って戦わずに試合を終えた。

妹夫婦をがっかりさせ、監督を失望させる結果にはなったけど、3歳の弟は小さな体を震わせて異様な大人たちとの戦いに勝ったのだ。

僕はそれでいいと思った。

そしてこの試合を通してとても大事な事を子供に教えてもらった。

これから先の人生でもそんな理不尽な戦いは続くし、それはきっと長い。

どうかそのまま自分の内側にある神意識を保って、大人たちの都合に潰されないでほしい。

次の年、4歳になった弟が同じ大会に出て、同じ年の男の子たちを全員薙ぎ倒して優勝した。

その圧倒的な強さの秘密を大人たちはたぶん誰も知らない。







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