【カルト】
悪しき集団であることを明確にするために用いられる通俗用語。
元来は、「儀礼・祭祀」の意味を表す、否定的・批判的なニュアンスを持たない宗教用語。
30歳くらいの時、ネットのとあるサイトに作った自分の日記ページで、他のユーザーの夢診断をしていた事がある。
僕はもともと“夢”に興味があり、夢診断の本を読んでいたら、他人の夢の内容も分析してみたくなったのがきっかけだった。
ゲームサイトなのでユーザーは10代、20代の子が多く、僕の日記のコメント欄には日頃の悩みと一緒に、鮮明に覚えている夢の内容や、気になる夢の内容などが書き込まれていた。
始めた当初は書き込みが少なかったので、所詮素人の夢診断だから誰も興味を示さないんだな、と思い、興味を持ってもらえるような肩書を考えてプロフィールに乗せてみた。
“ドイツに留学して心理学を学び、そこで出会った夢診断の権威から日本ではあまり知られていない夢診断の方法を教えてもらう”
そんな経歴と独自の夢診断名を書き込んでみた。
するとそれ以降、そのプロフィールを見たユーザーが興味を示し、ほぼ毎日のようにコメント欄に夢診断の相談が来るようになった。
僕が当時やっていた夢診断の方法は、まず相談者に書き込んでもらった夢の内容から気になったキーワードを3つ拾い、夢診断の本でそのキーワードが示す意味をそれぞれ調べる。
次にその3つのキーワードの意味をまとめて、最後に僕の解釈を加えて診断するというものだ。
悩みのほとんどは人間関係に関するものだったから、とにかく相談者に合わせて納得しそうな診断結果を文章にして返信していた。
ほとんどの人がなぜかプロフィールを信じ切っていたので、僕の下した診断は専門的な知識の裏付けが取れたありがたいものとして重宝された。
「完全に当たっている!」という人まで現れて、口コミで広がったのか、僕の夢診断の評判が急激に上がり、日に日に相談者がどんどん増えていった。
中には夢を見る度に相談して来る人もいて、「診断がないと不安だ」と依存するようになった人もいた。
僕自身も頼りにされれば嬉しいし、評判が上がれば人の役に立った満足感とか期待に応えている自信みたいなものも湧いてくるから、診断が毎日の楽しみになっていた。
教祖と信者。
いつからか、僕と相談者たちはそのような関係になっていたと思う。
僕はそれを機に、人は専門的な知識やスキルがなくても、無意識に人をコントロールしたり、されたりする関係になる事に気付いた。
磁石のS極とN極みたいに、相手をコントロールしたい自己顕示欲が強い者と相手からコントロールされたい優柔不断な者がお互いを引きつけるのだ。
そういう偶発的に起きたマインドコントロールによって、教祖と信者のような関係が出来てしまった。
僕は飽きっぽい性格だから、相談者が増えて面倒になった時点でやめたけど、何か目的を持ってそのまま続けていたら、ミニ新興宗教のようなものがひょっとしてら出来ていたかもしれない。
マインドコントロールの知識やスキルに関する情報はネットを探せばいくらでもあるし、本もたくさん出ている。
それを自分の目的に合わせて意識的に使えば、カルト宗教の火種くらいなら簡単に作れるだろう。
オウム真理教のように信者を監禁した状態で、暴力や薬物、ヘッドギアなどの機器類を用いた強制的な方法を取れば「洗脳」だ。
マインドコントロールに関しては、学校、会社、キャバクラやホストクラブなどの水商売、アイドルコンテンツ、自己啓発セミナー、親子間の教育や躾、男女の恋愛、各種メディアに至るまで、自分たちのごく身近な日常でも頻繁に起こっている。
僕がやっているこのブログに影響される人や感化される人も少なからずいるだろう。
それがその人の行動原理になってしまえば、本来その人が望むものとは違った人生を歩み出すなんて事も十分あり得る。
物理的なものにしろ、心理的なものにしろ、コントロールする人とされる人は、お互いに何らかの利害で一致した共依存関係にある。
ほとんどの人は普段自分の言動や行動をあまり意識していない。
仕事、SNSでの発信、買い物、恋愛にしろ、それに伴うほとんどの言動、行動を無意識の状態でやっている。
言い方を変えると隙だらけの状態で生活している。
だから僕は人間関係の摩擦で起こる悲劇や不幸は、人間の無意識化された言動や行動の結果によるものだと思っていて、基本的には自己責任だという考えで生きている。
僕が気を抜けるのは自分一人だけで過ごす空間と、信頼出来る親しい人たちと過ごす空間だけ。
そこから一歩外に出た瞬間から、僕は出来るだけ常に自分の言動、行動を意識化するようにしている。
僕が生きている社会は、常に敵がいるようなジャングルではないけど、不要なトラブルや事故を避けるためには、常に自分を意識化して、半分世捨て人のような気持ちで社会と接するくらいがちょうどいいと思う。