先日夢の中で“ART”とは何か?を僕に諭す人がいた。
その人が言うには“ART”とは「Animism Regression Trance」の略語で、“人間がアニミズムに回帰するためのトランス状態の中で創るもの”という意味らしい。
人間には不可解な現象や曖昧な感情を、言葉や色、形を使って表現し、新しい概念として理解する力がある。
芸術家とはその力を使って積極的に新しい概念を生み出す者であり、その概念が普遍的なものとして世に受け入れられる事を喜びとする。
古代人はその芸術の力を使って、太陽、雨、風、海の波音、捕食関係にある動物など、自分たちが接する自然界への脅威や恍惚感、畏怖の念などを言葉にし、色や形に変えて“アニミズム”の概念を誕生させた。
万物に霊が宿るとするアニミズムの概念を獲得したことで、人間は自然界が自分たちにもコントロール可能な領域であると認識するようになった。
そして古代人は自然現象や動植物の生態系が持つメカニズムを霊の働きに置き換え、祀り、祈り、踊りなどの行為を通して霊と交感、交流し、自然界から得る恩恵と害悪を自分たちのコントロール化に置いて、日々の暮らしに役立てて来た。
それが古代から現代に至るまで芸術が果たしてきた社会的役割であり、表現によって新しい概念を生み出すのが芸術家の使命だと。
僕は現在、パソコンのペイントソフトを使って絵を描いている。
ペンや筆の代わりにマウスを握り、パソコン上にある架空のキャンバスを線や色、形で埋めていく。
コンセプトが思いついてから描く事もあるけど、ほとんどの場合、衝動的な感覚だけを頼りに描いている。
ペイントソフトのツール項目から色を決めて、線を決めて、形を決めて、何も考えずにとにかくどんどん作業を進めていく。
ある程度画面が色や形で埋まっていくと、その段階の視覚情報から何か閃きのようなものが起こり、表現の方向性が風景や生物などの、確かな概念に決まっていく。
夢の中の人が言うように、ARTが「Animism Regression Trance」“人間がアニミズムに回帰するためのトランス状態の中で創るもの”なら、完成した絵の構図や色彩は既に僕の中にテーマやコンセプトとしてあったのだろう。
だから集中力が続く限り何枚でも描ける。
ペイントソフトを使う理由は、ペンや筆より不思議とマウスの方が集中して描けるからだ。
僕は小さい頃からクレヨンや色鉛筆、水彩絵具などで絵を描き、専門学校では日本画、油絵、彫刻なども一通りやった。
以前はパソコンなどのデジタルツールを使ったART創作は邪道だと思っていたけど、ペンや筆にはないマウス独特の描き心地が楽しかったり、どの画材よりもペイントソフトが一番トランス状態に入りやすかった。
パソコンの画面とマウスの操作性上、アナログの画材にしか出せない質感や、緻密で正確な線描写などの表現はあまり出来ないけど、逆にアナログの画材では出来なかった新しい表現の可能性を秘めているので、僕の性に合っている。
一番トランス状態に入りやすい制作スタイルが見つかったので、それをもっと長時間維持出来るような環境なども模索しながら、これからも創作を続けたいと思う。