芸術

映画『ターミネーター・ニューフェイト』起こり得るディストピア

投稿日:2020-04-17 更新日:

あらすじ

ある日、未来から来たターミネーター“REV-9”(ガブリエル・ルナ)が、メキシコシティの自動車工場で働いている21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)と弟のミゲルに襲い掛かる。ダニーとミゲルは強化型兵士のグレース(マッケンジー・デイヴィス)に救われ、 何とか工場から脱出した。そして彼らをしつこく追跡するREV-9の前に、サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)が現れる。

監督:ティム・ミラー 

キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン

ジョン・コナー少年と同じ年くらいに『ターミネーター2』を観てからもう28年が経つ。

当時ノストラダムスの大予言が覆っていた終末の気配は消え、映画同様に僕が生きる現実世界も核の脅威を回避する事が出来た。

しかしその後も局地的な戦争は続き、世界同時多発テロ事件や3.11などの大災害を経て、コロナウィルスによる歴史的パンデミックを食らい、日本も世界もますますヤバい展開になって行きそうな様相を呈している。

今後の世界は5G通信が実現する「あらゆるものがネットと繋がって自動化される社会」へ移行する見通しのようであるが、そこには核以上になるかもしれない大規模サイバー攻撃の脅威も潜んでいる。

人為的なテロにしろ、AIの暴走にしろ、その果てには映画『マトリックス』のように、人間がAIのためのインフラと化す未来が待っているかもしれない。

『ターミネーター・ニューフェイト』はそんな未来の前夜を思わせるような内容の物語で、人類の新たな脅威である「リジョン」が送り込んだターミネーターと戦うために登場する人たちはジョン・コナーやカイルのような強い男性ではなく、なぜか皆強い女性ばかりだった。

映画の世界でもAIの台頭によって労働の機会を奪われた人間の姿が描かれる。

そしてこれまで労働で社会的価値を保って来た男性が用済みになった。

労働で賃金が得られなくなった男性は、当然女性や子供を養う事が出来なくなり、AIに対抗する事が出来なければ生物の雄としての価値すらなくなる。

AIから社会的価値と生物的価値を剥奪された男性は父性を喪失して、人類が繁栄していくための生殖行為を自ら断念しなければならない。

自暴自棄になった粗野な男性ばかりになれば、結果人類は繁殖する事をやめ、徐々に死滅する運命を辿る。

核の脅威が去り、強い男性リーダーであったジョン・コナーも不在となった世界で、その危機を目の当たりにして立ち向かう決意をしたのは女性だった。

男性が女性を守れなくなった以上は女性が男性を守り、強い父性の回復へ向けて指導しなければならない。

だからその強い女性リーダーを未来から守りに来たのはサイボーグ化された強い女性兵士であり、助太刀として参戦する者もかつて強い男性リーダーを生んだサラ・コナーのような人でなければならなかった。

唯一強い父性の象徴として彼女たちを守ろうとしたのは、皮肉にも繁殖能力を持たない旧式のT―800型のターミネーターで、年月を経て老いる事によりその人間味が増していた。

このシリーズは全編を通して、キリスト教世界が信じるメシア待望論と、タイムスリップの理論を纏った輪廻転生の仏教思想を骨格にした物語構造になっていると思う。

メシア救済とメシア抹殺の使命を受けて未来から過去にタイムスリップして来た裸の人間と裸のターミネーターは、生まれ変わって何度も戦い続けなけばならない業を背負った者たちの姿であり、彼らに託された運命は絶えず変わって時に和解したりする。

それでも現時点での決着はいつも人類の勝利で終わり、僕個人的には今回の『ニューフェイト』でずっと観続けて来たターミネーターサーガの見納めがついに来たと思った。

ようやくケリがついたのだ。

現実世界の未来は映画とは違い、常に不確定で可能性だけがある。

過去を変える事も出来ない。

だから今を生きる事がなにより大事。

『ターミネーター』を観る度、僕はそんなメッセージを強く受ける。







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