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小説『芋虫』本当の生き地獄

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あらすじ

傷痍軍人の須永中尉を夫に持つ時子には、奇妙な嗜好があった。それは、戦争で両手両足、聴覚、味覚といった五感のほとんどを失い、視覚と触覚のみが無事な夫を虐げて快感を得るというものだった。夫は何をされてもまるで芋虫のように無抵抗であり、また、夫のその醜い姿と五体満足な己の対比を否応にも感ぜられ、彼女の嗜虐心はなおさら高ぶるのだった。

ある時、時子は夫が僅かに持ちうる外部との接続器官である眼が、あまりにも純粋であることを恐れ、その眼を潰してしまう。悶え苦しむ夫を見て彼女は自分の過ちを悔い、夫の身体に「ユルシテ」と指で書いて謝罪する。

間もなく、須永中尉は失踪する。時子は大家である鷲尾少将と共に夫を捜し、「ユルス」との走り書きを発見する。その後、庭を捜索していた彼女たちは、庭に口を開けていた古井戸に何かが落ちた音を聞いたのだった…。

江戸川乱歩

仕事の休憩中、首吊り自殺しようとして失敗した人のツィートをたまたま見た。

自分の誕生日に死のうと思っていたらしく、「お先です、逝ってきます」の投稿後、「失敗した」と続きの投稿をアップしていた。

意識が飛んで気付いたら足が付いてて、下半身が尿で冷たくなっていたところでぼんやり戻ったらしい。

喉が痛くて、首に痣が出来たみたいだけど、不幸中の幸いで、大きな後遺症はないとの事だった。

次は確実に死ななければと思うと、次はもう手段も方法も選べないかもしれない

安易に死ねないからこそ安楽死が欲しいのに、生きることを美化する人間こそ死を舐めている

多少冷静さを取り戻したこの言葉がすごく気になった。

もしまだ「死にたい」と思っているのに、後遺症で全身が動かなくなって意識だけがある状態になったら、この人は本当の生き地獄を味わっていたと思う。

芋虫。

それは戦争で負傷して帰還した名誉ある軍人の成れの果てだ。

手足がなく、耳と口が不自由。

自分の意思を周囲に伝える事が出来ない。

唯一意思を伝える事が出来る眼さえも潰される。

「芋虫」を読み、この軍人の状況を想像した時、僕は心底恐怖と絶望を感じた。

死ぬ事でしかこの苦しみから解放される手段はない。

しかし五体不満足で意思を伝える手段を持たない軍人にはそれすら容易でない。

首吊り自殺に失敗してしまった人の心境もそれに近い気がした。

希死念慮がひどかった二十代の時、僕は死にたくなると、夜ビニール袋を被って布団の中に潜っていた。

ビニール袋を被り、中の酸素がなくなると、頭がボーっとして来て、そのまま体動かなくなり、楽に窒息死する。

そんな情報を得て、毎回死ぬつもりでそれをやっていたのだけど、全然死ねなかった。

酸素がなくなると、ビニール袋が顔に張り付いてただただ息苦しい。

布団の中でサウナのように全身汗びっしょりになって、その不快感に堪え切れず布団を出る。

今日も死ねなかったな」と後悔するんだけど、今思うとそれは全然後悔ではなくて、体が動かなくなってから「まだ生きたい!」と思った時に本当の後悔が始まる気がする。

飛び降り自殺にしろ、飛んだ瞬間に「生きたい!」と思ったら、それは想像を絶する恐怖だろう。

だから僕は死ぬのが怖い。

五体不満足になるのも怖い。

目が見えなくなるのも怖い。

人間はいつかは必ず死ぬけど、僕は死ぬのが一番怖い。

いろんな人生経験を経て年々生きやすくはなって来たけど、嫌な事、不快な事もいっぱいある。

でも死ぬのが一番怖い。

死ぬよりマシだ。

不老不死の薬があったら間違いなく飲む。

失業、失恋、家族、恋人、友人との死別。

餓死する苦痛と恐怖を知ってしまった今となっては、今後何があっても浅ましいくらい生に執着すると思う。

僕が唯一死にたくなるとしたら、この「芋虫」。

この本のような生き地獄を味わう時くらいだろう。







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