哲学・思想

映画『愛しのアイリーン』愛はお金で買えるのか?

投稿日:2021-02-28 更新日:

あらすじ

岩男(安田顕)がアイリーン(ナッツ・シトイ)を連れて久しぶりに故郷の村に帰省すると、死んだことを知らずにいた父親の葬儀が執り行われていた。42歳になるまで恋愛とは無縁だった彼がフィリピンから連れてきた妻は、参列者の動揺をよそに夫について回る。すると彼らの前に、喪服姿でライフルを抱えた岩男の母親(木野花)が現れる。

監督:吉田恵輔 

キャスト:安田顕、ナッツ・シトイ

愛はお金で買えるのか?

この映画を鑑賞中そんな事を問われている気がして、ふとある出来事を思い出した。

以前京都の福知山にあるフィリピンパブで、席についたフィリピンの女の子に「日本人ハ何デ彼女ニ愛シテルッテ言ワナイ?」と聞かれた事がある。

愛してる?日本人はそんな事誰も言わないよ

ドラマや映画じゃあるまいし、いくら二人の関係が盛り上がってもさすがにそれは言わない。

そう思った。

言っても「好き」まで。

長年連れ添っている老夫婦でもない限り、シャイな日本人に「愛してる」はかなりハードルの高い言葉だ。

フィリピンの人は愛してるって言うの?

恋人ナンダカラ、当タリ前デショ!I LOVE YOU❤️

恋人なんだから当たり前だと彼女は主張したけど、その場のノリもあってか、その「愛してる」には日本人が「好き」って伝えるのとそれほど変わらない、軽い感覚がある気がした。

僕がそれまで思っていた「愛」は無条件で相手を思いやる概念であり、運命的で、良い時ばかりでなく、雨の日も風の日も決して変わらないものだった。

だから余程の想いと覚悟がない限り、軽々しく口に出来る言葉ではない。

フィリピンの女の子にとって愛って何?

僕はお金を払えばニコニコと横に座ってくれる、人懐っこい彼女に聞いてみた。

真面目ニ働ク男が愛シテクレル人。暴力振ルワナイ、浮気シナイ。フィリピンノ男、アマリ働カナイ。スグ暴力振ルウ人多イヨ

彼女の個人的な感想か、フィリピンのお国柄かは知らないけど、日本人はフィリピン人より真面目で優しいらしく、きちんとお金さえ稼いでくれれば愛を感じるようだった。

たとえ見た目が悪くスケベな気性でも、上の条件を満たしていれば問題ないようだった。

その後肥えたオヤジに指名されて僕の席を立った彼女は、カラオケのステージでそのオヤジとデュエットしながら、嫌な顔一つせずに胸とお尻を揉まれていた。

そこに愛があるなら別にいいか、僕はそんな気持ちでそれを眺めていた。

彼女のような恋愛観は非モテな人が多い日本人には願ったり叶ったりな話ではないだろうか?

この映画も田舎で非モテな42歳の独身男が300万円でフィリピンのお嫁さんをもらう。

その行為は一見、結婚して世間体を保つための大義名分を借りてはいるけど、内実は職場の同僚との失恋の痛手を取り繕うためであり、常に性に飢えた悶々とした日々を解消するためである。

本来お金では買えないはずの愛を、この男はお金で買った。

自暴自棄になり、お金で買ってしまったのだ。

冷静に見れば、これは人身売買による単なる政略結婚に過ぎない。

ヤクザ者がその現実を男とフィリピンの娘に突きつけるけど、二人の愛は盲目どころか狂気を帯びて暴走する。

物凄い愛憎劇だけど、恋愛事情に関しては田舎ではよくある事だ。

人手不足で出会いがない田舎の農村や漁村では東南アジアの女性たちと集団お見合いをして結婚するケースが多い。

そもそも自由恋愛でカップルになって結婚に至るのが常識的になったのは、戦後くらいからじゃないだろうか?

それまではお見合いで結婚するのが主流だったと思う。

愛があるから夫婦になるのではなく、夫婦になったから、仕方なく「愛」らしきものを二人で育む。

そんなケースがあってもいいんじゃないか?

お金で買われたアイリーンは現に物語の中で、歪な夫に尽くそうとしていた。

その姿勢には「愛」がある気がする。

少なくても300万円分は夫とその家族に対して健気で献身的だったと思う。

物語の展開はただただ地獄だけど、僕はお金で買える「愛」があってもいいかもしれないね、と、不覚にもこの映画を観終えて思ってしまった。

愛は無償ではなく、等価交換。

その方が分かりやすい。

けど、残念ながら本気で売っている人を見た事がない。







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