哲学・思想

メンタルクエスト

投稿日:2021-05-26 更新日:

人間の心を操って、恐怖と不安で支配しようとする悪い魔法使いがいました。
その悪い魔法使いは魔法の力を使って、善人のふりをして人間に近づき、油断した人間の心の扉を開けて、大事な秘密を盗み、自分の城に閉じ込めました。
悪い魔法使いに大事な秘密を盗まれ、心を操られた人たちは、いつも不安でお互いの事が信じられなくなりました。
だんだん仲が良かった家族、友達、恋人の事まで怖くなる人たちがいたので、このままでは国が大変なことになると思った王子が、悪い魔法使いの城に忍び込み、悪い魔法使いから人々が盗まれた大事な秘密を取り戻すことにしました。
王子は悪い魔法使いが寝ている隙に城の中をあちこち探し回りました。
すると、城の地下の方から「助けて~」と叫ぶたくさんの人の声が聞こえて来ました。
王子が城の地下に向かうと、そこは地下の牢屋で、悪い魔法使いに拐われた人間の大事な秘密たちが、一人ずつ牢屋の中に入っていました。
ああ王子様、助けに来てくれたのですね。さぁ早く私たちをこの牢屋から出してください
牢屋の中にいる大事な秘密たちがそう言いました。
すぐに助けてあげるからね
この牢屋は中からは開きませんが、私たちが自分の秘密を外の人に漏らせば外から開ける事が出来ます
王子は言われた通り牢屋の前に立って、一人ずつ秘密を聞いて行きました。
あなたの秘密は何ですか?
王子様、オイラの秘密は家族に内緒で夜中にこっそり酒を飲むことです。医者に止められているのですが、これだけは止められません
牢屋の中にいた太った男の秘密がそう答えると牢屋の扉がガチャンと開きました。
ありがとうございます!王子様。オイラの秘密は誰にも内緒ですよ
太った男の秘密を助けた王子は次の牢屋に話しかけました。
おまえの秘密は何だい?
王子様、ボクの秘密は友だちのお金を盗んだことです。学校に友だちのカバンが置いてあって、ボクどうしても欲しい楽器があるんだけど、お金が足りないから、つい友だちのカバンからお金を取っちゃったんです
牢屋の中にいた貧しい子供の秘密がそう答えると、牢屋の扉がガチャンと開きました。
ありがとうございます!王子様。ボクの秘密は誰にも言わないでね
貧しい子供の秘密を助けた王子は次の牢屋に話しかけました。
キミの秘密は何かな?
王子様、アタシの秘密は恋人との結婚を許してくれなかった母親を憎んでいる事です。母親が選んだ相手と結婚してそれなりに楽しく暮らしているのですが、本当は心の底から母親を憎んでいました
牢屋の中にいた若い女の子の秘密がそう答えると牢屋の扉が開きました。
王子様ありがとうございます!アタシの秘密はみんなには内緒にしてくださいね
王子はそうやって牢屋に入っている秘密たちを次々助けて行きました。
そしていよいよ最後の牢屋の番になりました。
あなたで最後です。さぁ早くここを出ましょう。あなたの秘密を教えてください
王子が最後の牢屋にそう言いました。
王子様、残念ながら私の秘密を言う事は出来ません。私はいつもひとりぼっちで生きて来たので、今まで誰にも心を開きませんでした。そもそも私は心を開くという事がどういう事なのかわかりません。だから悪い魔法使いも私の心を開けず、怒ってそのままこの牢屋に私を閉じ込めました。この牢屋の鍵は悪い魔法使いが持っています。悪い魔法使いは私が心を開くまで、私をここに閉じ込めておくと言いました。だから私はもうこの牢屋から一生出られないのです
そうだったんですね。でも安心してください。この王子が必ず悪い魔法使いのところからあなた牢屋の鍵を奪って、ここを開けてみせます
王子はそう言って地下の牢屋を出ると、悪い魔法使いが眠る塔に向かいました。
塔では悪い魔法使いがベッドでぐっすり寝ていました。
王子は悪い魔法使いが起きないようにそっと近づき、牢屋の鍵を探しました。
牢屋の鍵は悪い魔法使いが寝ているベッドの小箱の中に入っていました。
鍵を見つけた王子はすぐに地下の牢屋へ戻りました。
鍵を見つけました。すぐにあなたをここから出してあげましょう
王子は最後の牢屋を開けて、誰にも心を開かない若者を牢屋から出してあげました。
さぁ早くこの城から逃げてください
ありがとう王子様。私はあなたのことなら信じる事が出来そうです。そこで一つ聞きたいことがあります。どうやったら人に心を開くことが出来ますか?
王子はしばらく考えてから、こう答えました。
自分の大事な秘密を人に打ち明けることです
なるほど、では王子様の大事な秘密は何ですか?
誰にも内緒にしてもらえるなら言いましょう
絶対内緒にします。教えてください
王子は少し考えてからこう答えました。
私の秘密は、本当はこの国の王子様ではないことです。本当の王子様は病気で亡くなりました。私はもともと王子様の従者だったのですが、「王子の死は国の人たちには絶対に秘密だ」という王様の言いつけを守り、この国の王子様のふりをしています。そしていずれ王様のあとを継いでこの国を治めなければなりません
すると誰にも心を開かない若者がこう言いました。
フフフッ、まんまと騙されたな。ワシはこの城の魔法使いだ。そなたの秘密はワシがもらった。この国の王子の秘密をみんなが知れば、人びとはもう誰も信じることが出来なくなるだろう
誰にも心を開かない若者が悪い魔法使いの姿に変わりました。
しまった。悪い魔法使いだと知らずにうっかり信じてしまった
王子の大事な秘密を知った悪い魔法使いは、国中にそれを広めるために塔に向かいました。
待て!
王子も悪い魔法使いを追って塔に向かいました。
悪い魔法使いは王子の秘密をばらすために塔の一番高いところまで飛んで、国中にこう叫びました。
皆のものよく聞け!ワシはとうとうこの国の王子の大事な秘密を知ってしまった。おまえたちがその秘密を知れば、もうおまえたちは誰も人を信じられなくなるだろう
悪い魔法使いの声は国中に響き渡りました。
おまえたちが王子だと思っていた王子は本当の王子ではない。本当の王子は病気で死んだ。今ここにいる王子は偽物の王子だぞ
悪い魔法使いの声を聞いた人たちはみんな驚いて、「王子様に騙された!王子様はウソつきだ!」と騒ぎだしました。
国の人たちに秘密を知られた王子はもうどうすることも出来なくなりました。
みんなちょっと待って!
王子の秘密を知って大騒ぎになった人たちの中から、牢屋で王子に助けられた人たちが出て来て声をあげました。
オイラたちは悪い魔法使いに大事な秘密を盗まれて、その秘密を牢屋に閉じ込められていたんだ。それを王子様が一人で助けてくれた。だからウソつきは悪い魔法使いのほうだ。みんな騙されないで!
そうよ、王子様は本物よ!
ボクも王子様に助けてもらったよ。たとえ本物じゃなくても、あの王子様がいい
そうだ、そうだ!
牢屋で王子に助けられた人たちのおかげで、王子のふりをしていた王子をみんな信じることにしました。
なんてうれしいことだ。本当の王子ではない私をみんなが信じてくれるなんて。さぁ魔法使いよ、もう怖くないぞ。おまえを信じる人は誰もいない。早くこの国を立ち去るがいい
ま、まさか偽物の王子を信じるなんて
悪い魔法使いの言葉を信じる者が誰もいなくなったので、悪い魔法使いは仕方なくあきらめてどこかへいなくなりました。
みなさん、悪い魔法使いはいなくなりました。これでまたこの国は平和になります
バンザーイ、バンザーイ
王子のおかげで悪い魔法使いはいなくなり、この国はまた平和に戻りました。
しかし人間が心に秘密を抱えている限り、悪い魔法使いはきっと何度も現れます。
本当の平和は人間の心に秘密がなくなった時に訪れるでしょう。







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