オカルト・スピリチュアル

『オカルト原風景』祖母と幽霊

投稿日:2021-06-09 更新日:

僕の祖母は幽霊が見える人だった。

祖母は大正生まれで、兄妹がたくさんいた。
祖母はたまに自分の兄妹やご近所の年寄りたちを家に誘って飲み会していた。
年寄りばかりの会だから、大抵みんな昔の苦労話に花を咲かせて、会が盛り上がる。
小さい頃、僕もたまに祖母の膝に座ってその会に参加し、目の前のご馳走を食べながら年寄りたちの話を聞いた。

祖母は酔いが深まると、苦労話から発展した怪談めいた話をたまにし出す。

婆ちゃんはなぁ、おしんより苦労したんだぞ

兄妹が多い大正生まれの祖母は、小さい頃から他所の家に奉公に出たりして家計を支えていた。

すっかり暗くなってから家に帰る事が多く、一人で人気のない田んぼの畦道なんかを歩いていると、時々不思議な出来事にあったり、怖い目に遭ったりしたらしい。

ある時、暗い夜道で道端のお地蔵様を通り過ぎると、後ろからずっと誰かがついて来るような気配を感じた。
怖くなった祖母が小走りで先を急ごうとすると、後ろの気配もそれに合わせてついて来る。
祖母が後ろを振り向くと、人か何か分からない真っ黒なものが道端に立っている。
祖母はその時、お地蔵様の裏に誰かが隠れていて、自分を乱暴するために追いかけて来たと思い、慌てて逃げたら、その真っ黒いものが追い付いて祖母に覆い被さって来た。
背中にずっしりと何かが乗って来て、しっかりとしがみついて離れない。
祖母が必死の抵抗で怒鳴りながら、それをなんとかふりほどくと、さっき通り過ぎたお地蔵様が祖母の足下に落ちていた。

また祖母は誰か親しい人が亡くなると、亡くなる前日の夜に祖母の枕元にその人が立っている事がよくあったらしい。
死者が別れの挨拶に来たのか、祖母が以前からなんとなくその人の死を予感して夢を見ているのは分からないけど、祖母が「今、誰々が来たぞ」と言うと、実際に次の日に電話が鳴って、その人が亡くなった事を告げられた事があった。

実家の近所の子供に不幸があり、通夜に参加した時も、祖母だけが誰もいない二階の部屋で子供が遊んでいるような足音を聞いている。

祖母は僕が三十代の時に大腸がんで亡くなり、妹の話によると、祖母が亡くなる何日か前に、祖母が「白い人たちが婆ちゃんの部屋にいっぱい入って来る!」と騒いで怖がっていた事があったらしい。

その頃東京にいた僕は、実家から祖母の容態がそろそろだという連絡を受けて実家に帰った。

地元の最寄り駅まで兄が迎えに来てくれたので、そのまま二人で祖母のいる病院へ見舞いに言った。

久しぶりに会う祖母はもうかなり衰弱していて、人工呼吸器で苦しそうに息をしている状態だったけど、耳はまだ聞こえるらしく、僕が「婆ちゃん」と声をかけたらうっすらと目を開けた。

それからしばらく一緒にいて、兄と実家に戻ったら、すぐに病院から祖母が亡くなった電話があり、そのままとんぼ返りで遺体を引き取りに行った。

東京から帰ってすぐの出来事だったから、たぶん祖母は僕が帰って来るのをずっと待ってて、僕の顔を見てから死ぬつもりだったんだな、と思った。

祖母はそんな感じでいろいろ不思議な体験をしているけど、僕がテレビで心霊番組を観ていると、決まってなぜか「幽霊なんかいない」と言っていた。

自分はいろいろ霊体験をしているのに矛盾した言い分だけど、祖母は幽霊みたいなものは見えない方がいい、信じない方がいいと言いたかったのかもしれない。

祖母はいつも孤独でどこか陰気なところがある人だったから、僕がそうならないように陰気な趣味であるオカルト的なものから、僕を遠ざけようとしたのかもしれない。







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