エッセイ

ゴミ屋敷ちゃん

投稿日:2021-06-27 更新日:

枚方のアパートが築40年以上のボロアパートなので、よく上の階から水が漏れてくる。

水漏れの原因は大雨だったり、3階と2階の住人が洗濯機を回したまま出かけて、ホースが外れた事に気付かず、長時間放置した結果、1階の僕の部屋がビチョビチョになる。

そういう悲惨な状況の時、3階と2階の住人はいつも不在なので、大家さんに連絡してから僕が廊下の元栓を閉めて対処する事になる。

大家の老夫婦が二人、申し訳なさそうな顔で僕の部屋の被害状況を写真に収め、それから上の階の状況を確認するために、不在の部屋の鍵を開けて中を調べに行く。

その際「上の階の住人と連絡つかなくて勝手に部屋に入るから、一緒に立ち会ってほしい」と大家さんにお願いされるので、僕も水を漏らした住人たちのプライベートを覗く事になった。

何度か同じアパートの住人たちと顔を合わせた事はあるけど、誰がどの部屋に住んでいるかまではわからない。

安くてボロいアパートだからか、同じアパートに住んでいる人たちは、みんなどこか病的で陰気な感じの印象がする。

よく見かけるのは、両手を前につき出してトボトボ歩く小柄なお婆さんと、香水の匂いがキツすぎる太ったギャルだ。

朝方トボトボと出歩く小柄なお婆さんの行先は知らないけど、太ったギャルは僕が出勤する時間になるとアパートに帰って来るから、たぶん水商売をしているんだろう。

大家さんと立ち会った2階の部屋を見た時、すぐにこの部屋が太ったギャルの部屋だと分かった。

変な言い方だけど、その部屋は清潔感のあるゴミ屋敷だった。

とりあえず玄関先がハイヒールとレディースのスニーカーで埋まっていた。

そこから奥は床が見えないくらいコンビニの袋が山積みになっていて、ギャル系のファッションアイテムが至るところに脱ぎ捨てられている。

「嗚呼…」

大家さんが小さい溜め息を漏らして、恐る恐る中に踏み込んでいく。

だらしがない性格を通り越して、片付けが出来なくなるほど、精神が病んでいる女の子なのかもしれない。

ダイエットをしているのか、部屋の隅にルームランナーが置いてあった。

僕が遅番で朝の出勤時間がゆっくりな時、たまに上の階からドタバタする音がする事があったけど、たぶん正体はこのルームランナーだと思う。

カーテンを閉めきった薄暗い部屋は香水の匂いとアロマの匂いが充満していて、ゴミだらけでも不快な感じはしなかった。

たぶんこの香水とアロマの匂いが清潔ではない部屋の清潔感を醸し出していたんだと思う。

意識が高いのか低いのかよくわからないけど、内面が疎かになっても外見はしっかりと磨きたい意地はまだあるみたい。

そういう感情が空間を埋め尽くそうとする大量の物から溢れて来た。

以前西表島に住んでいた時、バイト先の後輩と一緒に古民家で生活していた事がある。

彼も太ったギャル同様に片付けが出来ない人で、以前住んでいた職場の寮から古民家に引っ越して来る時、引っ越しの荷物があまりに大量だったので驚いた。

段ボールの中に賞味期限が1年以上も切れている八丁味噌が入っていたので、「これ、もういらないでしょ?」と言ったら、「まだ使えるかもしれないんで…」と、かなり迷ってから捨てる決意をしていた。

それから二人で必要な物と不要なものを分けていったけど、彼は捨てると決意した後も、なんとなくまだ未練が残っている感じで、また手に取って迷ったりしていた。

僕にとってはゴミみたいな物でも、人によっては迷って捨てられないほど大事な物だったりするから、勝手には捨てられない。

生活に必要なものしか置いてなかった古民家が彼が持ち込んだ荷物でだいぶ賑やかになった。

彼はとても素直な性格で、先輩である僕にすごく気を遣ってくれた。

だから彼が古民家に来てからの暮らしはすごく楽しかったんだけど、たまに休みの日になると、グッタリしていて、丸一日寝ている時もあった。

生まれながらの気質から来る精神疾患があるのは知っていたから、部屋が荒れるのも仕方がないと思った。

夜になると激しい歯ぎしりをしている時もあった。

僕も最近歯の検診に行ったら、歯がすり減っている事を指摘され、歯ぎしりしている事が発覚した。

人は寂しさなどで心の隙間が埋まらないと、空間を物で埋めてしまうみたいな話を聞いた事がある。

たまにテレビでゴミ屋敷の主人に密着する番組をやっていたりするけど、みんな大抵独り身で、家族や知り合いがいなかったり、近所付き合いもない場合が多い。

物が大量に溢れている同じアパートのギャルの部屋からも、そんな孤独を感じた。

彼女の部屋ほどではないけど、僕の部屋もだいぶ物が溢れて来た感じがする。

部屋に物がある過ぎると、その重力で行動が鈍くなる気がするから、要らないものはなるべく捨てて、物より誰かと一緒に体験する事になるべくお金を使っていこうと思う。







-エッセイ
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

3.11の時

3.11の時に味わった感覚を記憶を頼りに忠実に書きたい。以前も一度書いたけど、あまりうまく書けていなかった。 あの日僕は東京の市ヶ谷にあるオフィスビルにいた。某パソコンメーカーの総務課で働いていて、作 …

競馬のススメ

今年から競馬をやりはじめた。 以前「競馬は投資だ」みたいな記事を書いたけど、実際やってみると予想するのが難しくて、競馬はやっぱりギャンブルだな、と思う。 でもこの先の不安定な社会の事を考えると、たとえ …

パーソナリティ障害診断テスト

下記の質問に対し、過去数年間の自分の傾向を思い浮かべながらもっとも当てはまる選択肢を選んでください。「△」が多くなりすぎると診断の感度は低下します。 当てはまる 〇  どちらともいえない △  当ては …

タラレバ心配性

例えば、今悩んでいる自分を安心させるために、未来から来た自分がこれから起こる事をあれこれ教えてくれたとする。 現在のボク 「嗚呼、オレの将来どうなるんだろ?」 未来のボク 「安心しろ。今おまえは将来に …

よりによってココ壱で

「究極の選択なっ!カレー味のウンコとウンコ味のカレー、おまえはどっち食う?」 暇を持て余した友達がそんなしょうもない質問をして来た。 よりによってココ壱番屋で僕が必死に5辛のカレーを食べている時にだ。 …

祐喜代(sukekiyo)

PROFILE

PROFILE

祐喜代(SUKEKIYO)

大阪在住

社会に属しながら世捨て人として人生を謳歌するために、思索と創作表現などをしています。

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

嗤う狐の藝術

祐喜代『星空文庫』ページ

嗤う狐のYOUTUBEチャンネルはこちら↓

ネットSHOP

SUKEKIYOオリジナルアートSHOP

『AMS』はこちら↓

https://ams.base.shop/

 

スポンサーリンク