エッセイ オカルト・スピリチュアル

予言ちゃん

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怪談話みたいな話になるけど、実話だから僕個人的にはかなり後味の悪い体験だった。

東日本大震災をきっかけに、僕はそれまで住んでいた東京を去って、東北の地元に帰省した。

妹夫婦の家に居候して、一年半くらい地元の企業で働いていたんだけど、その間仲の良い同級生たちとよく飲みに行った。

行くのはだいたい同級生の行きつけのスナック。

その日行ったお店には高校のクラスメイトだった女子の妹が働いていた。

僕はそれまで一度も面識がなかったけど、知り合いの妹となると、なんとなく初対面でも親近感がわく。

同級生と他愛もない話をしながら、その子にクラスメイトだった姉の近況を聞いたり、その子自身の事なんかも聞いたりしながら飲んでいると、その子は一度結婚して離婚し、シングルマザーになって実家暮らしをしているようだった。

地方の飲み屋で働く子はわりとシングルマザーが多い。

しばらく飲んでいると、その子が急に「ちょっと最近あった怖い話あるんだけど、聞きたい?」と言って来た。

何、どんなの?

酔いが深まった同級生たちは、カラオケタイムに入り、あまりその子の話に食いつかなかったけど、ちょうど季節が夏で怪談話が好きな僕は、面白そうだな、と耳を傾け、彼女の話を聞いた。

今年の正月、友達の家に呼ばれて遊びに行った時の話なんだけど

彼女はその年の正月、幼稚園の息子がいる友達夫婦の家に招かれて、みんなでテーブルを囲みお酒を飲んでいた。

大人がワイワイ楽しく酒を飲んでいる側で、幼稚園の息子が一人で何かしながら遊んでいる。

さんてんいちいち、ゆ~らゆら

時々そんな言葉を歌いながら遊んでいるから、気になったクラスメイトの妹が「その歌な~に?」と尋ねると、その子はキョトンとして「知らな~い」と言った。

知らな~い」と言いつつ、またしばらくすると「さんてんいちいち、ゆ~らゆら」と、口癖みたいに歌い出す。

え、何この歌? 今、幼稚園で流行っている歌?

気になって友達夫婦に聞いても「ね、変でしょ、笑。最近よく歌うんだけど、アタシらも何の歌かさっぱりわかんないの

さんてんいちいち、ゆ~らゆら。さんてんいちいち、ゆ~らゆら

ほとんど無意識に歌っているような感じだったから、たぶん子供向け番組で流れている歌か何かを覚えて歌っているんだろうと思い、その日はさほど気にせず、お酒をごちそうになって帰った。

それから三ヶ月後の3月11日。

東北を中心とする大規模な地震が起こった。

東日本大震災。

幸い僕の地元の方は地盤が硬く、それほど大きな被害はなかったけど、この地震を受けて、正月に友達の家で幼稚園の息子が口にしていた「さんてんいちいち、ゆ~らゆら」という不思議なフレーズが、3月11日の大地震を予言しているものではないか?と、みんな思い始めた。

さんてんいちいちは日にちの3.11で、ゆ~らゆらは地震で揺れる、って事だと思うんだよね

クラスメイトの妹が言うには、3.11の地震以後、その幼稚園の息子は「さんてんいちいち、ゆ~らゆら」という不思議なフレーズをぱったりと口にしなくなったらしく、なぜかそのフレーズをいつもブツブツ呟いていた事さえ憶えていないような感じになってしまったらしい。

それでね、つい最近その友達の家に遊びに行ったらね、その子またあの歌ったの。今度は「じゅってん◯◯、ゆ~らゆら」って言ってて、アタシも友達夫婦も10月にまた地震来るんじゃないかと思ってビビってる!

僕は正直その話を、クラスメイトの妹がネットで拾った都市伝説か、人から聞いた話だろうと思って、話半分くらいで聞いていた。

だから「じゅってん◯◯、ゆ~らゆら」の◯◯にあたる数字までははっきりと憶えていない。

10月にまた地震来るのか、ヤベェな、笑

同級生とそんな感じで笑いながら彼女の怪談話を聞き終わり、特に気にもせずそれからまた何回か店で一緒に飲んだりしていたんだけど、結局10月になっても地震は起きなかった。

でも10月のある日、勤め先の会社に行ったら、朝パートさんに話かけられて、「アンタの地元の人、昨日交通事故で亡くなったんだってね、今朝の朝刊に載ってたよ」と言われ、気になって家に帰ってから新聞をチェックしたら、行きつけの店で働いていたそのクラスメイトの妹の名前が載ってあった。

すぐに同級生に電話したら、同級生もクラスメイトの妹が亡くなった事を既に知っていたようで、詳しい事情を聞いてみると、前日の夜、店に出勤しようとして自宅の車庫からバックで車を出した時に、家の前を通過しようとした車に追突されて即死だったらしい。

じゅってん◯◯、ゆ~らゆら

そういえば、

彼女の怪談話の中で幼稚園の息子が口にしたという、この不思議なフレーズを思い出し、これは10月に地震が来るんじゃなくて、彼女自身の交通事故を予言したものなんじゃないか?と、思った。

僕も同級生も彼女からこの不思議なフレーズの怪談話を聞いているから、彼女自身が自分の死を予言したとも言える。

◯◯の数字が彼女が死んだ日かはわからないけど、彼女が10月に死んだのは本当だ。

あまりに出来すぎているから、自分でこうして書きながら、なんか嘘みたいな話だな、とも思うけど、偶然にしても後味が悪い。

知り合いの死を怪談話にしていいのかな?という迷いもあった。

でもなんとなく書いて残しておきたい想いがあったので書く事にした。

人って本当にいつ死ぬかわからない。







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