芸術

小説『ロコ! 思うままに』自分なんて何者でも構わない

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あらすじ

異常者により10数年間、奇怪な館に閉じ込められた少年・ロコ。だが、館を訪れた少女・リサと出会ったことで、ロコの胸にはある決意が芽生えることになる。「生きることを始めた」少年はいま、1人の少女のために恐怖と絶望の世界へ走り出した!倒れてさえ、思うままに。光と闇。死と再生。そしてロック。

大槻ケンヂ

繁華街を舞台にしたダークでポップな恋愛ファンタジー小説を書いてみようと思って、オーケンさんの小説を久しぶりに読んだ。
カバーイラストは浅野いにおさんが描く女の子。
ロックとオカルトとサブカル要素満載の短編集。
オーケンさんとは趣味趣向がよく似ているので、オーケンさんの文体や作品の世界観にも刺激を受けている。
同じ匂いがする人生の先輩として憧れ、尊敬しつつ、「こんな中二病を拗らせたような大人でもロックスターになれるんだな」と、背中を追えば届きそうな親近感なんかも勝手に抱いている。
バンドブームの恩恵を受けて「筋肉少女隊」でデビューし、マニアックなバラエティー番組にも出演する覇道のロックスター。
そんなオーケンさんはニッチな路線で細々と芸能界で生き続ける、温厚でユニークな愛すべきダメ人間みたいなパブリックイメージがあるけど、この短編小説をはじめとする詩集などの文筆活動では、人間の心理や世の中の裏側にも精通しているインテリな一面も垣間見せてくれる。
本書の第二章「闇の側へ」に収録されている「アイドル」「ドクター・マーチン・レッド・ブーツ」「キテーちゃん」「怪人明智文代」の四篇が、オーケンさんのパブリックイメージを一掃してしまうような興味深い内容になっていた。
特に表題の「アイドル」の物語は、オーケンさんが18歳の菅野美穂と交際していた時のエピソードを下地にしているのではないか?と邪推するほど、オーケンさんのプライベートが見えた気がした。
死んだ妹の人格を憑依させて、淫らな行為で姉である自分に復讐するアイドル。
アイドル時代の菅野美穂にとってオーケンさんは初めての熱愛彼氏だったらしく、菅野美穂がアイドルから実力派の女優に転身したきっかけが、この短編に近い経緯だとしたら、オーケンさんには催眠術師やメンタリストのような知識と技術がある事になる。
中二病を拗らせた愛すべきダメ人間の内側に潜んでいる、狡猾で思慮深い大人の視点。
オーケンさんにSEX&ドラッグに溺れたミュージシャンのイメージは全然なかったけど、この短編小説の描写が、どこまでオーケンの虚と実なのかわからなくなるくらいリアリティがあった。
オーケンさんはもうタレントになったあたりから中二病を克服して、色物として清濁併せ呑むちゃんとした大人になった。
いや、それどころか、ロックミュージシャンとタレントという肩書きでこの世の酸いも甘いも噛み分け、世の男性が羨む美味しい思いを日夜し放題の大人になってしまったんだ、と、どこか裏切られたような気さえした。
背中を追えば手が届きそうなどと親近感を抱いてはいけない、僕とは人種の違う遠い世界の人間。
僕が思っている以上にオーケンさんという人間の幅は広いのかもしれない。
それでもロコみたいな人物像がやはりオーケンさんの原型なのだと信じたい気持ちもまだあり、自分の殻に閉じ籠った世界を、好きな人に出会った事がきっかけでぶっ壊されたダメ人間が、なりふり構わず思うままに生きようとする姿は、滑稽ながらも愛おしい。
だから今後も懲りずにオーケンさんの背中を追いかけて行きたい。
思うままに生きられたら、善でも悪でも構わない。
美でも醜でも構わない。
本物でも偽物でも構わない。
光でも闇でも構わない。
思うままに生きられたら、自分なんて何者でも構わない。
そんな清々しい読後感がある小説だった。

オーケンチャンネル大槻ケンヂYouTube







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