芸術

映画『MOTHER』 母親という絶対的存在

投稿日:2021-08-02 更新日:

あらすじ

男にだらしなく自堕落な生活を送るシングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、息子の周平に異常に執着する。秋子以外に頼れる存在がいない周平は、母親に翻弄(ほんろう)されながらもその要求に応えようともがくが、身内からも絶縁された母子は社会から孤立していく。やがて、17歳に成長した周平(奥平大兼)は凄惨(せいさん)な事件を引き起こしてしまう。

監督:大森立嗣

キャスト:長澤まさみ、奥平大兼

世間で言うところの“毒親”が子供に罪を背負わせる物語。

こんな母親どう思う?

許す? 許さない?

そんな問いが頭の中を駆け巡る。

子供が不幸になる物語は精神的に辛い。

実際こういう母親がいるんだろう。

僕は家庭を持っていない独身男性だから、女性や母親という立場でこの映画を観る事が出来ない。

だからどうしても息子の目線でこの映画の物語を追う事になる。

この母親が子供を愛していたかどうかは正直わからないけど、子供が母親を愛していたのは分かる。

人間がこの世に生まれる前から結びついている存在は母親だけだから、母親から子供が受ける影響はすごく大きいと思う。

子供にとって母親がいない世界は脅威でしかない。

まともに考えたら、同じ血が通った母親といえど、自分にとってマイナスにしかならない存在は切り捨てて当然だとは思う。

ろくに働かず、金の無心ばかりするこの母親に対して、劇中の親も妹もほとほと手を焼き、縁を切る決断をしている。

子供が成人するまで面倒見続けるのが親の役目だろ!

この母親は社会や他者が理想とする、そんな母親像を全うする事が出来ない。

するつもりもないようだった。

一人の女として人生を享楽的に過ごし、子供が出来ても親という立場から逃げ続け、時に反発する。

誰の目から見てもこの母親が社会不適合者である事はすぐにわかる。

ただ生物のメスとしてこの母親の見方を変えてみると、すごく優秀な生存戦略を取っているようにも思えた。

自分の性的魅力をよく知り、男性の庇護がないと生きていく事が出来ないか弱い女性を演じる事で、一時的にではあるけど、自分たち家族を養ってくれそうなオスの下に転がり込み、寄生して生きる事に成功している。

この母親はそういった環境の中で自分の息子自身も自分を養ってくれるオスとして育て上げようとしていた。

人間が本質的に持って生まれて来る利己的な遺伝子の顕現をこの母親に見た気がして、最悪だけど、この母親の生命力みたいなものには強く惹かれるものがあった。

社会不適合でも、この母親が本能的に取る生存、生殖行動はちゃんと機能していて、無意識ではあるけど、その逞しい本能に呼応して、この物語の息子は母親を愛して信頼しているように思えた。

たとえば僕の場合、病気やケガをした時に側にいて欲しいのはいつも母親だった。

父親の方が病気やケガに関する知識があったとしても、看病して精神的な安心感を与えてくれるのは、父親ではなく母親だった。

そこに理屈はなく、母親の手と言葉で癒してもらわないと、病気もケガも回復しないような気がして不安になるのだ。

本能に突き動かされたこの強力な親子の結び付きを、社会規範に組み込まれた親子の文脈で理解するのは難しいと思う。

この映画を観た母親の多くはおそらく嫌悪感を持ったと思うし、毒親である事を自覚している母親は共感したかもしれない。

物語はこの母親がどうして毒親になってしまったかまでは明確に描いていない。

そこは想像で補うしかないけど、息子が犯す罪の中にその理由が現れた気はする。

理想の母親であろうとする母親への恨み。

理想の母親を押し付けられる苛立ち。

子供は産まれる決断も出来ないし、母親も選べないから、社会が提示する道徳観や倫理観だけで、この親子のような悲劇を防ぐのは難しい。

愛着障害と毒親の問題に関しては、何が原因で、誰に責任があるかなどと問えば、卵が先か鶏が先かみたいな水掛け論にしかならないだろう。

たとえ毒親でも子供にとって母親は母親。

絶対的な存在だ。

映画『MOTHER







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