芸術

アニメ『ぼくらの』椅子取りゲームと不幸の手紙

投稿日:2021-08-14 更新日:

あらすじ

夏休み――自然学校にやってきた15人の少年少女。

そこで、小学生の宇白可奈を除く14人の中学1年生は、ココペリと名乗る謎の人物と突然、契約を結ぶ。

その契約は

戦いに負けたり、勝負がつかず48時間経過すると、地球は破壊され、

全人類のみならず地上の全生物が死滅する。

操縦者は、事前に契約した者の中から選ばれた1名がなる。

操縦は一人で行い、勝手に変更する事は許されない。

ロボットは人の生命力で動く。一戦闘する代わりに、操縦者の命を奪う。

世界の滅亡か ぼくらの死か。  

監督:森田宏幸

原作:鬼頭莫宏

壮大なSFなのに、鑑賞中ずっとどこか懐かしい感じがあった。

なんだろう、この感覚?

アニメの絵がちょっと古臭くて、暗いからかな?

夏休みの自然学校に来ていた思春期の少年少女たちが巨大ロボットに乗って、自分の命と引き換えに、自分たちの地球と宇宙を存続させるために戦う。

単なるゲームだ」と騙された、任意の強制参加。

君、ちょっと行ってくれないか
すてごまになってくれないか
いざこざに巻き込まれて
死んでくれないか

THE BLUE HEARTSの『すてごま』の曲の歌詞みたいに、みんな一人ずつ死んでいく。

彼らの個人的事情と世界の命運を天秤にかけ、「どのみち死ぬならやろうかな?」「自分みたいなちっぽけな存在でもみんなの役に立てるならやります!」と、半ば投げ遣りな気持ちというか、自分の存在意義を見出だせない自虐的な犠牲を払って少年少女たちが謎の敵に向かっていく。

率直な感想を言えば「エヴァンゲリオン」と「まどマギ」の設定が合わさった感じで、わりと好きな物語。

そして最後の搭乗者に課せられたルールとジアースプログラムの謎が明かされた時、僕が感じた懐かしさの理由もわかった。

椅子取りゲームと不幸の手紙。

少年少女が参加するこの残酷なゲームは、僕が小学校の時に体験した嫌な思い出によく似ている。

小学校の時、お楽しみ会か何かのイベントでやらされた椅子取りゲーム。

僕はこのゲームが嫌いだった。

クラス全員参加で、椅子で丸い輪を作り、先生が音楽を鳴らす。

音楽が鳴っている間、みんなでぐるぐる椅子で作った円の周りを回り、音楽が止まったら、みんな自分の近くにある椅子に一斉に座る。

椅子は一人分だけ足りない。

だから一人だけ椅子に座れない人がいる。

そのたった一人だけ椅子に座れなかった人は、みんなが安堵した表情で座っている椅子の円の中央に突っ立って、みんなに笑われたり、なじられたりしながら恥ずかしい思いをする。

先生はこの椅子取りゲームを「集中力と瞬発力を養うためのゲームだ」みたいな事を言っていたけど、嘘だと思った。

僕らが大人になってから参加するこの資本主義の競争社会を体感するためにあるゲーム。

一人だけ負けたり、落ちこぼれた時の恐怖を味わうためのゲーム。

共同体からはみ出したら生きていけない事を叩き込むためのゲーム。

そう思っていた。

だからみんな単なる遊びなのに必死で椅子に座ろうとしていた。

必死過ぎて、手を出して人を押したり足を出して他の人が椅子に座ろうとするのを阻止する人も出る。

既に椅子に座った人に腹を立て、その人の膝の上に座って、グリグリと体重をかける馬鹿みたいな人もいた。

そんなにまでして椅子に座りたいか?

僕はそんな醜い姿に呆れて、毎回わざと負けた。

音楽が鳴りやんでも、ダラダラして椅子に座る意欲をまったく見せなかった。

そんな感じで僕が負け続けるから、だんだんみんな白けて来て、終いには「ちゃんとやれ!」と先生にも怒られた。

それでも椅子に座った人こそ負けな気がしたから一人でずっと立ち続けた。

社会に出たらこれよりもっと醜い椅子取りゲームみたいなものに参加させられる。

立ち続けながらそんな事を思って憂鬱になった。

これはカナダの友人から回って来た不幸の手紙です

そんな感じの文面で始まる「不幸の手紙」という嫌な遊びも小学校の時に流行った。

誰から回って来たのか分からないけど、机の中に汚い字で書かれた手紙が入っていて、「50時間以内に29人にこの手紙を出してください」と命じる内容が書いてある。

その命令に従わないと「あなたのところに必ず不幸が来る」という、脅し文句なんかも書いてある。

本気にはしていないけど、回した人がいる事自体がなんだか気持ち悪い。

回したの誰だろ?

どういう気持ちで回したんだろ?

とにかくそれが気になって居心地が悪い。

手紙を受け取り、「不幸になりたくない!」と思った人が、また28人に同じ文面の手紙を書いて送りつける。

手紙の内容を真に受けているわけではないと思うけど、自分も誰かに押し付けられたから、他の誰かにも不幸を押し付けたくなる。

その負の連鎖がずっと続くふざけた遊び。

緊急事態宣言の外出自粛もそうだけど、僕は任意なのに強制力が働いているような事がとにかく嫌いで、不幸にはなりたくないけど、その手紙は誰にも回さず捨てた。

だから「アンインストール、アンインストール」と訴え続けるこのアニメのオープニング曲を聴く度、

お互い戦わずにゲームを放棄する手もあるけどな

そもそもインストールしなければいいじゃん

洞窟に住んでいる怪しいインテリメガネの誘いに乗る事自体がおかしいよ

と、なんかいちゃもんつけて、この鬱々としたアニメを笑い飛ばしてやろうと思った。

ぼくらの。

それに続く言葉は人それぞれだと思うけど、僕は「希望」っていう事にしておく。

いつも読んでくれてありがとう。

ぼくらの:アニメ版公式サイト







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