哲学・思想

日記のススメ

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以前ずっと書いていた日記をまた書いてみる事にした。

日記に書く内容はその日にあった出来事や気持ちだったり、なんとなく思い出した過去の出来事、将来の展望、今後取り組みたい課題だったりする。

あとは創作メモや詩、小説なんかも書く時がある。

とにかく寝る前に思いついた何かを素直に綴る。

何も思いつかない時は書かない。

書かずに白紙にしておいたページも、それはそれで何かを記録している。

あとで日記を読みかえした時、日付と白紙のページを見て、「この日は日記も書けないほど心身共に疲れていたんだな」とか、「何もない空虚な一日だったんだな」みたいな記憶が甦ったりする。

日記を書いて、自分のその時の出来事や心境を自分自身で言語化出来るようになると、自分の思考の癖や、時期によって気分の波みたいなものがある事に気付けたり、普段抑圧している感情の存在を知ったりする。

特に愛着障害を抱えている人なんかは、対面ではっきりと自分の意見を言ったり、感情を出すのが苦手だったりするから、本当に言いたい事を吐き出す機会がないままどんどん感情を抑圧してしまう。

捌け口を求めてSNSをやってみても、結局そこにも他人の目があるわけだから、そこで構築した人間関係に気を遣ってしまい、本当に出したい感情が出せなかったりする。

でも日記ならその心配がまったくない。

思う存分好き勝手書いていい。

僕は日記を書くようになってから、今まで気付かなかった自分の奇妙な癖に気が付いた。

僕は平日仕事が終わって家に帰ると、それから外に出歩く事がほとんどない。

仕事終わりで疲れているし、基本的にインドアな人間だから、外に出たい気が滅多に起こらない。

でもたまにふらっと出かけたくなる時があって、そんな時はいつも満月の夜だった。

狼男じゃないけど、満月の夜は犯罪が増えたり、事故が多かったりする話がある。

僕の外出行動も満月の影響で、自分の中の欲望が活性化したとか、そういう理由があるのかもしれない。

それが分かったのは、月齢のカレンダーがついている日記をずっと綴っていたからだ。

日記を書く行為が習慣になると、書くのを忘れて寝ても、すぐに日記を書き忘れた気持ち悪さで起きるようになる。

綴る行為と寝る行為がセットになって、何か一言、一行でも綴ると、気持ちがリラックスして来て、眠気がやって来る。

SNSだと書き込んだ内容に対する返信や反響が気になったりするけど、日記は自分以外に読む人がいないから、個人名を出して愚痴や悪口を書いても、誰にも咎められない。

そして日記は、生きている間に書いた内容が、死んだ時にそのまま素直な遺書になる。

人間いつ死ぬか分からないし、碌に連絡も取らず、家族と離れて一人暮らしをしている僕みたいな者が突然死んだら、残された遺族はモヤモヤする。

でも毎日日記を書いておけば、残された人に僕の暮らしぶりや心境を確認してもらう事が出来る。

それを読んで後悔するにしろ、救われるにしろ、確かな事がわからずにずっとモヤモヤとしていた気持ちにはケリがつくはずだ。

僕の父親も日記を書く人だったから、父親が亡くなった後、実家の机に置いてあった父親の日記を読んでみた。

父親は前立腺がんで亡くなったんだけど、日記に書かれていた内容の多くは闘病に対する不安や自分が亡くなった後の心配事だった。

父親との仲は決して悪くなかったけど、僕も父親も兄も頑固だから、自分のやりたい事を否定されるのが嫌で、お互いに言いたい事を素直に言えない感じはあった。

高校卒業して地元を出てから、父親と話す機会はどんどんなくなったけど、僕が何か始める時は一応父親に報告はした。

とにかくやりたいからやる

僕が何か始める時の動機はそれだけだから、父親が心配してあれこれ言って来るのも仕方がない。

そうは思いながらも、理解が得られないと腹が立ち、諦めたふりをして、結局好き勝手やった。

自分のした事に後悔はないけど、父親や家族に迷惑をかけた罪悪感みたいなものはずっと持っていたから、父親の日記に家族についての想いが綴られていた時は、やっぱり苦しかった。

自由にやりたい事やっている息子たちが羨ましい

世の中が煩わしくてなって失踪したり、人生に迷って自分探しの旅に出たりする僕のデタラメな生き方を、まさか父親が羨ましく思っていたとは想像すらしていなかった。

僕の父親は祖母と二人だけの母子家庭で育ち、親孝行なうえに勤勉で成績優秀だった。

大学進学を周囲に薦められても、祖母の負担になるからと、進学を諦めてすぐに就職した。

真面目で誠実で堅実的な人だから、郵便局一筋で働き、30歳くらいの時に母親と結婚した。

自分の事より家族と他人優先で、近所、親戚、友人に何かあれば、出来るだけ力になろうとする人だった。

僕はそんな父親を尊敬していたから、父親ような大人にならなければいけないとずっと思っていた。

定年を迎えて郵便局を退職した事をきっかけに、「父親も残りの余生で何か自分のやりたい事でもするのかな?」と思っていたけど、母親が切り盛りしていた実家の食堂を手伝う平凡な毎日で、しばらくしてから前立腺がんが発覚した。

自由にやりたい事やっている息子たちが羨ましい

父親が家族の事など一切考えずに、自由にやりたい事をやれるとしたら、一体何がしたかったんだろう?

父親の日記を読みながらそんな事を考えていると、以前父親が夜中に一人で「インディジョーンズ」の映画を観ていた事を思い出した。

父親はよく夜中に一人でNHKのシルクロード特集や「インディジョーンズ」のような冒険物の映画を観る事が多かった。

冒険。

ああ、そうか、たぶんこれが父親のやりたかった事だったんだ、と日記を読みながら気付いた。

兄が自衛隊をやめてタイやネパールを旅したり、僕が失踪したり放浪したりしていた時、父親は心配しながらも、心の中では羨ましいと思っていたのだ。

僕のした事はただのドロップアウトで冒険とまでは思わなかったけど、「いつ死んでもいいや」と家を飛び出した時の開放感と、何にも縛られずに自由に行動出来る時間を過ごした事は、僕にとってかなり有意義な体験だった。

土地に縛られ、家族に縛られて自分のしたいを諦めた父親の後悔。

それを父親の日記で確認した僕は、僕の自由や幸福な時間は父親の自己犠牲の上に成り立っている事を知って、申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいになった。

後悔するにしろ、感謝するにしろ、人の本音を知ると、その人に対して自分が勝手に抱いていた思い込みとか感情が全部精算される。

兄の同級生の女子が交通事故で亡くなった時も、葬儀に参加した僕の母親がその人が綴った日記に救われている。

僕の実家は食堂だったんだけど、夏の思い出を綴ったその人の日記の中に、僕の実家の食堂の冷やし中華が美味しかった、また食べたい、と書いてあったらしい。

僕は夏の間、ほぼお昼は毎日のように食べていたから、自分の実家の冷やし中華にあまり有り難みを感じていなかったけど、お客さんの評判はわりと良くて、夏になると楽しみにしてくれる人もいる。

だから亡くなった人が日記の中でひっそりと僕の実家の冷やし中華を評価してくれていたのを知った母親は感動して、「食堂やってて本当に良かった」と嬉し泣きしていた。

SNSもいいけど、日記とか手紙で受け取る人の気持ちって、本当に言いたい事や伝えたい事と真摯に向き合っている気がするから、余計な感情や思い込みが入っていない。

相手の正直な気持ちが、頭の中だけでモヤモヤと堂々巡りをしているネガティブ思考の悪い状態を解消してくれる。

だいぶ長くなったけど、とにかく誰にも本音を話せず、いつも独りで押し殺している気持ちがあるなら、それを吐き出す場所は日記が一番だと思う。

興味があったら一度試しに書いてみてほしい。

いつも読んでくれてありがとう。







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