エッセイ 哲学・思想

ドラクエごっこ

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僕は独身なので子供はいないけど、妹夫婦の家に居候していた時に、子育てを手伝ったりして、子供がいる家庭の幸福を一緒に味わった。
仕事が終わって妹夫婦の家に帰ると、5歳と3歳の男兄弟が家で待っていて、ご飯を食べてから一緒に遊んだりして過ごす。
休みの日も特に予定がなければ甥っ子たちと一緒に遊ぶ。
僕は大人の世界というか、自分が大人である事に退屈していて、子供の世界に混ざって遊ぶ方が好きだ。
子供と一緒にいる時、僕の感覚は完全に子供に戻っている。
子供と過ごす時、少なからず他の大人たちも子供の感覚に戻ったりすると思うけど、僕ほど戻れる人はあまりいないと思う。
子供たちが「この人も子供だ」と、思うくらいに戻る。
そうすると子供たちは、普段大人たちに秘密にしている事をよく話してくれるようになる。
内容が深刻な場合は言葉を変えて大人たちに伝える時もある。
甥っ子たちは、僕が自分たちの母親の兄で叔父さんに当たる存在である事を知っていたとは思うけど、あまり意識はしていなかったように感じた。
母親と仲の良い体の大きい子供みたいな感じで僕と接していた実感がある。
だからよく自分たちの遊びに誘ってくれるし、僕も何かやりたい遊びがあると甥っ子たちを誘った。
甥っ子たちと遊んで一番記憶に残っているのはドラクエごっこ
夏休みだったと思うけど、甥っ子たちを車に乗せて3人だけで地元のスキー場に行った。
最初は無料の橇を借りて、ゲレンデの芝を滑って遊んでいたんだけど、だんだん飽きて来たので、ゲレンデの頂上まで迂回するコースを3人で登ってみる事にした。
ただ登ってもつまんないから、「ドラクエごっこしながら登るぞ!」と、なんとなく思い付きで言ってみたら、甥っ子たちがすぐに食いついて来た。
僕がゲームマスターで、甥っ子たちがプレイヤー。
お互いの想像力を使ってスキー場の迂回コースをドラクエの世界に変える。
オレ勇者がいい!
兄弟のどっちも勇者の設定を希望して来たから、ダブル勇者の設定で冒険をスタート。
最初はレベル1だから2人とも魔法は使えない。
近くにある枝を拾わせて、初期装備は「銅の剣」だと説明する。
全部その場の思い付きで進行していくから、どうなるかわからない。
ゲレンデの頂上にある大きな樹がラスボスの魔王。
迂回コースに生えてる雑草をモブキャラのモンスターに見立てて、僕が戦闘のBGMを口ずさんだら、甥っ子たちが想像力を使って戦闘を開始する。
甥っ子たちが雑草に向かって「オラッ!」とか「ワァー!」とか、興奮気味に叫びながら手にした枝を振り回す。
戦闘の状況は甥っ子たちの想像力次第だから、僕は二人の後ろを歩いて、雑草がへたったら、戦闘終了の合図を出した。
そして甥っ子たちの活躍ぶりに応じて、レベルアップのファンファーレを口ずさむ。
甥っ子たちが枝を振り回して、アクロバティックな技みたいなものを繰り出したら、レベルアップ後に特技を習得する設定。
砂をかける、石を投げるなどのアクションを思いついて繰り出したら、魔法を習得したことにして、僕が名前をつけた。
雑草も種類によってはしぶといのがある。そういった雑草は中ボスの設定にして、体力回復のアイテムと魔法は、家を出る時に妹に持たされた水筒のスポーツ飲料で兼用した。
夏場の熱中症が怖いので、回復アイテムと魔法は甥っ子たちの疲労感を見ながら、小まめに使うようにさせた。
武器の入手はすべて道に落ちている物を代用した。
甥っ子たちが自分で見つけて拾い、好きな名前をつける。
僕が見つけた物は全部レアな武器だと説明して、冒険は快調に進んでいった。
ゲレンデの迂回コースは大人の足だと10分もかからず登れる。
でも子供の足でドラクエの世界を想像しながら登ると、あっち行ったりこっち行ったりで時間を忘れて楽しむ事が出来る。
半分も登らないうちに、弟勇者がかなり疲れを見せ始めたので、休憩する事にした。
グズったら冒険をやめて帰った方がいいかな?と思ったけど、兄勇者はまだ冒険する気満々だったので、後半は兄勇者一人で冒険を再開。
弟勇者はモンスターの毒に犯された事にして、僕がおんぶして頂上を目指した。
途中でほぼ真っ直ぐな形の太くて丈夫な枝を拾ったので、それを「最強の剣だ!」と言って、兄勇者に渡した。
兄勇者がその枝を受け取った時、すごく嬉しそうな顔をしていた。
どんな剣を想像したのかわからないけど、ゲームが終わってからも家に持って帰るくらい気に入っていた。
最強の剣を手にしてから、兄勇者の武器を振り回すアクションも板について来た感じで、スタート時点にはなかったキレが出て来た。
自分を本気で勇者だと思い込んで冒険に熱中している。
それを見ていると、すごく嬉しい気持ちになる。
ついに魔王のところに来たよ!
ようやく頂上にたどり着き、僕が大きな樹を指差してそう言うと、兄勇者が「ウォー!」と雄叫びを上げて、一人果敢に魔王の樹に斬りかかっていった。
いくらなんでも兄勇者が持っている枝でこの樹は倒れない。
逆に枝が折れる可能性があったので、魔王を倒す設定はどうしようかな?と、ちょっと悩んだ。
戦闘の状況は兄勇者の想像にも頼っているから、樹の枝と葉っぱを何枚か落としたら勝ちにしようと思った。
背中におんぶした弟勇者とずっと様子を見守る中、兄勇者が背伸びをしたり、ジャンプしたりして、魔王の樹と戦う事数十分…。
やった、魔王倒したぞーーー!
自分の中で何か手応えがあったのか、汗だくになりながら兄勇者が歓声を上げた。
ゲームクリア。
それから力を合わせた兄弟を樹の下に並ばせて、ドラクエのメインテーマをみんなで口ずさんでエンディング。
冒険の余韻に浸りながら、木陰でたっぷり休憩してから下山した。
さすがに兄勇者も疲れたのか、帰りはあまりしゃべらず静かだった。
それでも車に乗ってから、2人ともまた元気になって来て「ドラクエごっこ面白かったから、またやりたい!」と言ってくれた。
その約束は実現せず、僕はそれから妹とケンカした事を理由にして沖縄へ行った。
2回目の失踪。
この事が甥っ子たちにどういう影響を与えたかはわからないけど、妹とも家族とも和解して実家に戻ったので、今は特に問題はない。

時が経つのは本当に早くて、2人ともあっという間に高校生と中学生になった。
もう親とも叔父とも遊ぶ歳じゃない。
久しぶりに実家に帰って顔を合わせても昔ほど戯れたりしなくなった。
それが少し寂しかったりもするけど、子供の時にいっぱい遊んだ幸福な時間の記憶はずっと残っているし、2人に何かあっても僕の2人に対する親愛の情みたいなものは全然変わらない。
子供時代は本人たちにとっても、それに関わる大人たちにとってもすごく貴重なものだから、関わる機会がある人は「ドラクエごっこ」をぜひやってみてほしい。
絶対面白いよ!

いつも読んでくれてありがとう。







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