あらすじ
2015年8月21日、554人の客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリスに、武装したイスラム過激派の男が乗り込み無差別テロを企てる。乗客たちが恐怖に凍り付く中、旅行中で偶然乗り合わせていたアメリカ空軍兵スペンサー・ストーンとオレゴン州兵アレク・スカラトス、二人の友人の大学生アンソニー・サドラーが犯人に立ち向かう。
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:アンソニー・サドラー,アレク・スカラトス,スペンサー・ストーン
自分の人生はこの瞬間に立ち会うためにあったのかもしれない。
時々そう思うような出来事に遭遇する事がある。
僕は以前沖縄の西表島に移住した事があり、その後沖縄、九州、西日本の聖地を巡る旅に出た。
僕は幼少の頃から父親との間に確執があり、ずっと折り合いがつけられずに悩んでいた。
西表島に移住した時も、父親をはじめとする家族の反対を押し切っての決行だった。
僕のやりたい事や目標とするべき事は、いつも直感的に沸き起こる。
明確なビジョンと心が躍るような強い感情が湧いた時、それを実行すれば後に必ず人生が好転するのだが、計画性と結果の保証が無いので、周囲に相談しても常に理解は得られなかった。
それで何度も父親や家族とぶつかった。
家族を振り切って決行した西表島での生活体験と聖地巡りで挑戦した四国八十八か所巡礼で得たものはとても大きく、それを機に、父親との間にあった確執がなくなった。
自分のやりたい事で結果を出して、自分らしく生きる事の意義をはじめて認めてもらう事が出来たと思った。
かなり時間がかかったけど、僕自身も僕の人生に支配的だった父親の事を許す事が出来た。
旅を終えた後、実家で癌の闘病をしていた父親の下に戻り、そこで一か月近く父親と一緒に過ごした。
それまでも決して仲が悪かったわけではなかったけど、素の自分のままでとても清々しい気持ちでいられた。
僕はそれから北海道へ行き、父親はその年の冬に亡くなった。
西表島での生活と放浪での体験がなかったから、僕は実家に帰っていなかっただろう。
沖縄へ向けて実家を出た時はもう一生会わないつもりでいたからだ。
父親と最後の夏を過ごせた事は、運命に呼ばれた結果だと思っている。
『15時17分、パリ行き』。
この映画の三人の勇敢な青年に起こった出来事もそんな運命的なものを感じさせる。
穿った見方をすれば、後付けの解釈で運命的な物語として描いたとも言える。
でもナポレオンヒルの『悪魔を出し抜け』を読んだ後にこの映画を観た僕には、この映画で起こった出来事が自然の法則に基づいた必然的な結果だと分かる。
たまたま同じ列車に乗り合わせた他の乗客たちにとっては奇跡だったかもしれないけど、三人の人生はこの日のために動いていた。
少年時代の出会いから、大人になって再会したヨーロッパ旅行までに彼らが取り組んで来た事の意味。
15時17分、パリ行きの列車の中でそれが証明される。
明確な目標と計画を持って生きて来た人間には必然的な運命の訪れがあると僕は確信しているので、この映画を後付けの感動物語にはしない。
内容は違えど明確な目標、ビジョンがあれば、誰にでも起こりえる物語だと思う。