哲学・思想

僕が自己開示する理由

投稿日:2019-09-11 更新日:

自分と他人を比較して、相対的な幸福を追い求める人たちは、自分や他人のプライベートな部分に敏感だ。

人の不幸は蜜の味。

自分が幸福でなければ他人の幸福も素直に喜べない弱さがある。

出来る事なら他人の心の中を隅々まで全部覗き込んで、自分と比較したいと思っているはずだ。

他人の心の中を隅々まで探って、自分の心の中は隠し通す。

特に日本人はそんな人が多いと思う。

千葉のゲストハウスで働いていた時、僕はそこで出会った年下の男の子の深い闇をたまたま覗いてしまった事がある。

僕はゲストハウスの管理の他に、プラントメンテナンスの仕事を請け負う事業の事務も一緒にやっていて、彼はその請け負い事業の社員として採用された。

彼とはじめて出会った時の印象は、人見知りで無口。

近くに人がいると、緊張で常に顔が赤くなっていた。

対人恐怖症。

そんな感じに見えた。

彼には人には言えない家庭の事情があり、僕は事務の関係で彼のプライベートな情報を知った。

彼を採用した上司は「ああいうタイプは真面目だから長く働くよ」と言っていたけど、僕はそんなに長くはもたない気がした。

請け負いの現場仕事はクライアントの指揮下で作業をする。

だから同じ会社の仲間とはもちろん、相手先の人たちともうまくやっていくための協調性が必要だ。

でも彼は会社にいてもほとんど誰とも話さなかったし、現場でも話さないようだった。

話さなかったというより、彼の家庭の事情が人との会話を躊躇させていたんだと思う。

「どこから来てるの?」

「一人暮らし?」

「兄弟は? 何人家族?」

こんな些細な日常会話でも、彼にとっては自分の生い立ちや家庭環境が知られてしまう恐怖になる。

だから彼は曖昧な返事をする事でしか、人との会話に対応出来なかった。

これは性格とかスキルの問題じゃない。

大抵の人にとってはなんて事ない会話でも苦痛に感じる人がいる。

健全な生い立ちと恵まれた家庭環境の人には分からない苦痛。

ごく当たり前の事が叶わなかった人たちが感じる苦痛。

彼の事情を知っている僕にも、その痛みまでは想像する事は出来なかった。

クライアントからは案の定、何を考えているかわからないヤツ、取っつきにくいヤツとして、彼へのクレームが来た。

無遅刻、無欠席で仕事は真面目にこなしていたけど、対人恐怖のまま誰とも話せない状態では、仕事の段取りや業務の連絡などに支障が出る。

生活のためになんとか必死で頑張っていたけど、僕は彼に今一番必要なのはきちんとしたプロのカウンセリングによる精神的なケアと、回復するまでの生活保護だと思った。

このまま働いてもらうにしても、彼のプライベートの事情を会社の仲間みんなで共有して、周囲が積極的に彼を支援していく何らかの仕組みが必要だと思った。

彼自身が職場の人間に自分の家庭の事情を自己開示するのが一番良いのかもしれないけど、それを彼に望むのは酷だ。

それでも僕は彼を全然ダメだとは思わないし、むしろこれまで誰の援助も受けずに必死で頑張って来たと思う。

その後、彼のプライベートな事情にさらに追い打ちをかけるような事態が発生してしまい、結局彼は1か月も立たずに会社を辞めた。

彼と同じように、自分の悩みや事情を人に知られたくないと思っている人は多いはずだ。

僕は人と人が仲良くなったり、信頼し合えるようになるには、お互いのプライベートな情報をどれだけ開示出来るか?

その深層度で決まると思う。

より深い部分まで見せ合って、それを受け止め合う事が出来た人同士にだけそれが叶うと思っている。

そしてその最深部まで行った者同士が本当の親友だったり、本当の恋人や夫婦になれるんだろう。

これはとても難しい事だ。

それが出来ずに孤独に苦しんでいる人が大勢いる。

僕がこのブログで自己開示する理由は、自分以外の他者を受け入れるためだ。

先に自分自身の事を開示して、他人が自己開示してくれた時、それを受け入れる準備をしている。

僕も出来れば自分のデリケートな部分に関してはあまり公にしたくない。

相手の心の闇やデリケートな部分にも出来れば踏み込みたくない。

でも他者を受けいれて絆を深めるためには、自己開示をする事は必要だ。

それなくして人の信用を得る方法は他にないと思う。

このブログを通して自己開示する時は「嫌われるかもな」と覚悟していつも書いている。

でも不思議と人に嫌われることはそんなになかった。

誰かが僕に自己開示してくれた時に、僕が自己開示せず相手を裏切る方が、僕にとっては問題だ。

僕には自分と同じ階層の闇までしか受け止められないから、開示するのも怖いけど、開示されるのも怖いのが本音ではある。

友達なんだから何でも話してよ

家族なんだから何でも話してよ

そんな感じで無理強いしても、自分から自己開示して信頼関係を築く努力をしていなければ人は心を開いてくれない。

他人の信頼を得たいなら、まずは自分から自己開示した方がいい。

自己開示出来ない人は、他人を受け入れる事も出来ないだろう。

自己開示して、それまで隠していた本来の自分を表に曝け出すと、だんだんと自分らしく生きられるようになる。

自分らしく生きられるようになれば、心の闇が晴れて、ほとんど他人の目を気にしなくて済むようになる。

嫌な事や不快な事は相変わらずあるけど、今はほとんど生き辛さを感じない。

逆にいろんな体験を経たおかげで、自己開示出来るほど人生に余裕が出て来たのかもしれない。

他人に無理やり暴かれるくらいなら、はじめから言ってしまえ!

そんな感じでこれかも開示していくつもりだ。







-哲学・思想
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

映画『万引き家族』社会に背を向けて生きる人たちの絆

あらすじ 治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は万引きを終えた帰り道で、寒さに震えるじゅり(佐々木みゆ)を見掛け家に連れて帰る。見ず知らずの子供と帰ってきた夫に困惑する信代(安藤サクラ)は、 …

自分の愛着スタイルを知って人生に納得する

これまでの人生を振り返ると、「こんなはずじゃなかったのに」とか「こんな人生望んでないのに」と、思う事ばかりだ。 なりたいもの、ほしいものがあって努力しても徒労に終わる事が多く、不甲斐ない気持ちになる。 …

脳と体は国家と国民である

以前書いた『飢餓状態で本能が目覚める』という記事を書いた。 その中で僕は、人は頭では「死にたい」と思っても、体はその思いとは裏腹に生きようとするという内容を主張した。 僕は脳と体(各細胞)の機能には、 …

不能犯

映画『不能犯』 洗脳のメカニズム

あらすじ 大都会を舞台に立て続けに変死事件が起こり、その現場には決まっていつも黒のスーツを着た男の姿があった。その男は宇相吹正(松坂桃李)で、“電話ボックスの男”とSNSで話題になっており、とある電話 …

小説『ドグラ・マグラ』 男女の絆と遺伝子の悲劇

僕には生まれた時から心臓疾患がある。 兄夫婦の間に生まれた姪っ子にも生まれた時から脳性麻痺の疾患があった。 人が何らかの障害を持って生まれて来る理由として、環境的要因であるとか、確率的な結果であるとか …

祐喜代(sukekiyo)

PROFILE

PROFILE

祐喜代(SUKEKIYO)

大阪在住

社会に属しながら世捨て人として人生を謳歌するために、思索と創作表現などをしています。

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

嗤う狐の藝術

祐喜代『星空文庫』ページ

嗤う狐のYOUTUBEチャンネルはこちら↓

ネットSHOP

SUKEKIYOオリジナルアートSHOP

『AMS』はこちら↓

https://ams.base.shop/

 

スポンサーリンク