芸術

映画『日本沈没(2006)』 政府の本音

投稿日:2019-09-30 更新日:

あらすじ

大規模な地殻変動によって日本列島が海中に沈没するという危険性が指摘され、それを証明するかのようなマグニチュード8以上の大地震が次々と発生する。そんな中、大地震の被害にあった潜水艇のパイロット小野寺(草なぎ剛)と幼い少女美咲(福田麻由子)は、ハイパーレスキュー隊員の阿部(柴咲コウ)に救出される。

監督:樋口真嗣

キャスト:草彅剛,柴咲コウ,豊川悦司

残り5年で日本が海に沈む。

もし現実的にそんな未曽有の大災害が起こるとしたら、政府はおそらくその事実を公表しないだろう。

物語の中の政府も残り5年の予測を裏切る速度で起こり始めた日本各地の異変を隠蔽した。

これは政府が無責任で無慈悲だからではなく、むしろ国民感情を十分理解したうえでの合理的判断だ。

事態を打破する明確な解決策がなければ、政府は事実の公表を伏せる。

正直に事実を公表してしまえば、パニックに陥った多くの国民が自暴自棄になり、来たる大災害を見ずに人為的な国難を招く事になるからだ。

これは言わば治る見込みのない末期癌の患者に対して、家族が余命宣告を躊躇うのに似ている。

どうせダメなら闇雲に恐怖や不安を煽らないよう、事態が直前に迫るまで沈黙する。

政府には陰謀とは別の致し方ない事情から来る隠蔽体質がどうしてもある。

綿密な災害シュミレーションに関しても、政府には国民に危機管理を促す目的と同時に、災害救助や支援にかかるコストをシュミレーション結果から算出して、事態収拾の最適解を求める意図がある。

想定される死傷者数は、シュミレーションした時点で救助や支援の対象から外されていると考えた方が無難だろう。

仮に2万人いる都市で想定される死傷者数が1万人だとしたら、救助、支援の計画と予算は生存者1万人に対して組まれる。

一般国民と上級国民の命は平等ではない」という、残酷な優性思想が働く瞬間を垣間見る事にもなるかもしれない。

フィクションとはいえ、この映画に見る政府の対応は、原作者の小松左京さんが現実の政府を観察して描いたリアルだ。

だから災害時の政府に過度の期待を持つのは禁物。

幸いこの映画には事態を収拾するために奮闘している人たちの姿がある。

尊い犠牲を払って任務を遂行しようとする人たちの姿もある。

生存を諦めずに、協力し合って努力する民間人の姿もある。

でもこれから起こる首都直下型地震や南海トラフのリアルは正直わからない。

政府には国民全員を救助、支援する義務があるはずだ!

そう憤る国民の心情は当然だとしても、最大限の自助努力と生存者同士の協力。

それを怠らなかった人にしか奇跡はないかもしれない。

でも必ず何人かは生き残り、復興する。

実際の災害が起こったらそう信じて乗り切りたいと思う。







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