あらすじ
絵を描くのが大好きな少年・真知寿(吉岡澪皇)は、自宅を訪れた画家に自分が描いた絵をほめられて、赤いベレー帽をもらう。真知寿は、その日から画家になることを夢見て毎日のように絵を描くようになる。そんなある日、父親(中尾彬)の会社が突然倒産して両親が立て続けに自殺を図ってしまい、真知寿の人生は暗転する。
監督:北野武
キャスト:ビートたけし,樋口可南子,麻生久美子
最近また絵を描きはじめた。
パソコンのペイントソフトか、タブレットのスケッチソフトを使って毎日2枚ほど描いている。
気に入った作品はpixivfactoryにキャンバス制作してもらい、現物の仕上がりを見てからネットショップで売っている。
仕上がりを確認するための初版は作品を気に入ってくれた人にあげる事にしている。
作品はまだ全然売れないし、正直まったく売れる気がしないけど、それでも創作しているのが楽しいので、創って売り続けようと思っている。
売れても売れなくてもとにかく頭の中が芸術の事でいっぱいだ。
僕もこの映画の主人公である真知須同様、小さい頃に周りの大人たちから絵を褒められてその気になり、ずっと芸術をやっている人間だ。
作品を褒めてもらっただけでなく、楽しそうに描いている態度だったり姿勢も褒めてもらった。
そのおかげで芸術に対する根拠のない自信が芽生え、死ぬまでやめる理由がなくなってしまった。
小さい頃に大人たちに騙されてその気になった人間は真っすぐに捻くれる。
真知須は僕よりひどくて芸術しか出来ず、芸術の事以外は無頓着な人間だ。
奥さんに「帰ろ」と言われるまで、人間性さえも疑われてしまうくらいに芸術にハマってしまった本物の芸術家。
僕は運良くそこまでハマらなかったので、正気を保ったまま器用に世渡りするような芸術家になってしまった。
でもこの映画を観ると、真知須に対して強烈な嫉妬を感じている自分がいる事に気付く。
芸術や芸術家をとことん美化するような物語が多い中で、芸術や芸術家に対する世間の本音とか辛辣な態度を思いっきりぶつけている北野監督の誠実さにも深く共感した。
誰もはっきり言わない芸術のリアル。
芸術は高尚なものだと信じて、唯一無二の個性を発揮しようとする僕たち有象無象の人間たちに突きつけられる残酷物語ではあるけど、“芸術”というわけのわからないものに翻弄される人間たちをユーモアに描いている部分には、芸術や芸術家をなんとか理解しようとする北野監督の愛情や尊敬の念なんかも感じられて、ありがたい気持ちになった。
僕は芸術は創る方も観る方もアホでなければいけないと思っている。
お互いがアホである事を自覚しつつ、高尚なフリをするのが芸術。
そんな思いが芸術に対してある。
だからこの映画は僕みたいな芸術家の良き理解者である。
そう勝手に解釈している芸術映画の名作だ。