哲学・思想 芸術

公募展の審査を手伝って気付いた事

投稿日:2019-12-12 更新日:

専門学校の時、講師の先生に公募展の絵を審査するアシスタントのバイトを紹介されて引き受けた事がある。

公募展の審査は県民美術館で行われ、僕たちアシスタントの仕事は応募された作品を審査員の人たちの前に運んで持っているだけ。

僕の専門学校から選抜されたクラスメイトの作品も応募してある公募展だったので、僕は作品の審査がどのように行われるのか興味深々だった。

審査会場には宮城県内の美術団体に所属している顧問の人たちが数十名集まっていた。

彼らが公募展の審査員を務めるわけだけど、比較的年配の人が多く、性別も男の人の割合が多かった。

審査方法は同じサイズの絵を4点くらい並べて、賛成多数で入選か落選かを決めていく方式だった。

ただ必ずしも賛成多数だけで決めるというわけではなく、力のある団体の審査員が意見をすれば少数の票でも賛否が引っくり返る事もあった。

大量の作品が次々と入選、落選に選り分けられていき、全作品の選り分けが終わると、今度は入選した作品だけをまた同じように4点くらい並べて各賞の候補が決まっていった。

作品を運びながら審査する風景を観察していると、審査員によっては風景画や人物画しか評価しなかったり、自分たちの団体に所属している応募者の作品を贔屓目に見ているような人なんかもいた。

団体や顧問による同調圧力や忖度を垣間見た審査会だっただけに、ちょっとがっかりしたけど、そもそも僕の作品は学校から選抜されていなかったので、むしろこんな公募展に参加しなくてよかったと思った。

邪推かもしれないけど、この手の公募展の目的は新たな才能を発掘する事ではなく、各団体や顧問の権威的な審美眼を継続するためにあるんだと思う。

審査する団体や審査員たちが好む作品の傾向さえわかれば、入選も受賞もしやすいだろう。

それを知らずに純粋な気持ちで創作された絵の評価はかなり厳しいものになる。

だからといって公募展や賞レースの傾向と対策なんかを気にして描けば、自分の独創性や感性は確実に死ぬ。

僕はこの審査のアシスタントのバイトを機に、公募展や賞レースにはあまり関心を持たなくなった。

僕にももちろん審査員同様作品の好き嫌いの傾向はあるし、同時に幾つかの作品を並べて鑑賞してしまえば、どうしても相対的な評価を下してしまうところはある。

でもARTは本来相対的に観賞するものではなく、作品それぞれが個別に主張するテーマやコンセプトに目を向け、一人静かに耳を傾けるような感じで接するものだと思う。

一つの作品と一人の観賞者が一対一で向き合い、お互いの感性に浸る。

僕の場合、その作品が好きか嫌いかはほぼ一瞬で決まる。

だから知らない作家さんの個展などを観に行く時はかなり緊張する。

プロアマ問わず、創作者も鑑賞者も正直な眼差しで作品を観る。

そういうフェアな空間。

作品と向き合っている時の眼差しが全てを物語るから、アンケート用紙への解答やその場で口にする感想などはほとんどあてに出来ない。

好きも嫌いもない感情の眼差しをしていたとしたら、それはある意味公募展や賞レースの結果や評価よりも残酷かもしれない。

それでも創れる人しか創れないのがARTだと思う。







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