哲学・思想

実感無き深刻な事態を受けて

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今日ネットニュースを見たら、志村けんさんが亡くなっていた。

数日前までは大丈夫そうな印象があったけど、突然逝ってしまった。

その事に驚きはあっても、あまり実感はなく、悲しみもそれほど湧いて来ない。

子供の時から大好きな芸人さんではある。

僕は志村さんの存在をテレビで知り、テレビで観る志村さんしか知らない。

テレビで志村さんのお笑いに触れ、その面白さに笑い転げ、親しみを感じていた。

だけどそれは僕の一方的な親近感で、志村さんは僕の身近な人ではないのだ。

家族や友達が亡くなった時のようには悲しめなくて当然の人だったのだ。

その事に志村さんが亡くなってから気付いた。

志村さんが亡くなるきっかけとなったコロナにしてもそうだ。

未だ実感がない。

目に見えないウィルスの存在をどうやったら実感出来るというのだろう?

情報を知って想像する事はもちろん出来る。

確実に存在するのだろう。

でも、どこにいるのかまるで見当がつかない。

僕はインフルエンザに罹った事も、重度の肺炎になった事もないので、コロナウィルスに感染した時の症状すら実感する事が出来ない。

風邪なら引いた事があるから実感出来るけど、それで死に至る事まではやはり実感出来ない。

実感する事が何一つないまま、事態だけが深刻化している。

『ロックダウン』『首都封鎖』

まるで映画のタイトルだ。

マスコミが終末的な雰囲気を煽って、浮かれているだけのような気もする。

目の前で突然誰かが倒れ、苦しみもがいて死ぬ様子を目にするまで、僕はこの非日常的な事態をおそらく実感出来ないだろう。

でも僕はドロップアウトした時に体験した非日常的な実感を持っている。

それがこの深刻な事態に対してどう機能するか?

そこに賭けているところがある。

飲まず喰わずで死に通じる飢えを実感し、真冬の野宿でも耐えがたい寒さを実感した。

そんな事を一度体験しているので、失業する事や家を失う事がそれほど怖くない。

飢餓の恐怖を克服するために10日間ほど断食を経験してみたりもした。

断食をして実感したのは、人は意識を変えれば飢餓すらも克服して、心身は衰弱するどころかむしろ快調だった事。

あくまで10日間までの実感でしかないけど、これは僕にとって貴重な体験だった。

だから飢える事についてもそれほど怖くない。

買い占めも、買い溜めもしなくて済む。

食糧難で周囲がパニックになっても、略奪したりせずに済むと思う。

毎日ネットニュースを眺めながら世界的な危機を想像しつつ、自分の日常にそれを照らし合わせようとはしているけど、自分の身に何か重大な出来事が降りかかるまでは特に怯える必要はない。

というより、実感がないので怯える事が出来ない。

志村さんは御年70歳だ。

ヘビースモーカーで毎日お酒を飲みに出歩いていたようだから、コロナウィルスに感染して重篤化する条件に沿っている。

この事態では当然の死だったのかもしれない。

志村さんを惜しむ人たちの感情は、志村さんの死やこの事態とは何の関係もない。

メディアが進歩したおかげで志村さんとはまた画面の中でいつでも会える。

死んだ事を受け入れる必要もない。

ほとんどの人がこの実感無き事態を実感無き言葉で囁き合っている。

どんな事態もテレビの画面やスマホの画面を眺めているうちは蚊帳の外で当事者じゃない。

僕はまだ事態の深刻さを実感せずに日常を過ごしている。

僕は今日淀川の河川敷で見た桜の開花を実感するだけだ。

それをきっかけに自分は確かに生きているとただ実感するだけだ。







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