芸術

友川カズキ『一人盆踊り』 結局得体の知れない人

投稿日:2020-04-11 更新日:

友川さんの随筆と詩を載せた文庫本。

友川さんは「まつろわぬ人」とか「どこにだしても恥ずかしい人」とか、いろいろ形容される人だけど、この本を読んで改めて思ったのはやっぱり「得体の知れない人」だ。

歌も絵も全部絶叫しているようだ。

私が私に殺される。

このタイトルの一遍にある怪談話めいたエピソードに、僕は友川さんの感性の到達点さえ見た気がする。

友川さんは秋田出身の人で、僕は秋田と山形の県境にある田舎で生まれたから、年は違えどほぼ同郷の人である。

だから友川さんが綴る詩や歌う時の方言は全然苦にならないし、ムラ社会の観念的なものに囚われて居た堪れなくなる感情とか、日雇い労働で自分自身の命をあまりにもちっぽけなもののように感じてしまう恨み辛みなんかも分かる。

友川さんの歌にも絵にも魂を感じる。

ただそこに自分の腸全部人様に見せてしまわないと気が済まないような素直さがあると思えば、「いやそれだって金のためだ」と居直る態度なんかもある気がして捉えどころがない。

酒飲んで博打ばっかりやってる事を恥じつつも、「俺には歌と絵があるし、とにがぐ真面目腐ってただ働ぐような人間にはならねど」と突っぱねる態度もある気がして、素直で自由にありたいと願う僕にはとても親近感の湧く人であると同時に、自分とはまるで違う生き方をしている近寄りがたい人でもある。

「友川さんはオレど会ったら、オレのごど飲みに連れでいってけっぺが?」

そんな事を思いながらずっと読んでた。

ダメな大人の典型みたいなふりをして、自由奔放に生き切る立派な大人。

友川さんはそう思わせてくれる人だ。

やりたいを事して、言いたい事を言ってたら、結局誰にも捉えきれない「得体の知れない人」になるのかもしれない。

もし友川さんと飲めたら、僕は飲めない日本酒も無理して飲もうと思う。

中上健次と遭った時の友川さんみたいに恐る恐る大胆にその場にいれたらいいなぁと思う。







-芸術
-

執筆者:

関連記事

才能に起こる異変

専門学校のクラスメイトに知的障害を持っている年上の人がいた。 人物、静物、風景などの写実的な描写だったらその人がクラスでダントツに上手かった。 実物そのものと変わらない立体感、重量感、透明感、空気感ま …

人類滅亡

もし人類が滅亡したら

もし人類が滅亡したら 僕はたった一人生き残った世界に巨大な『バベルの塔』を建設するつもりでいる。 この計画を立てたことで、僕はこの現実世界で今後いかなる悲惨な出来事が起きても、おそらく絶望しないで済む …

バトルロワイアル

映画『バトルロワイアル』 誰もが了承している殺人の不文律

あらすじ 大不況に見舞われ、失業者が全国にあふれる一方、学校では不登校生徒が増大、少年犯罪も多発、少年に対する大人たちの怒りが爆発、こうした国民世論を背景に強力な生存能力を備えた青年の養成と、強い大人 …

映画『インセプション』夢か現か?

あらすじ コブ(レオナルド・ディカプリオ)は人が夢を見ている最中に、その潜在意識の奥深くにもぐり込んで相手のアイデアを盗むことのできる優秀な人材だった。彼は、企業スパイの世界でトップの腕前を誇っていた …

マンガ『愛と呪い』物語で救う

不穏な社会。宗教を盲信する家族。父親の性的虐待。私は自分も、この世界も、誰かに殺して欲しいのだった――。酒鬼薔薇世代がくぐり抜けた「あの頃」を見つめ直す半自伝的90年代クロニクル。 原作:ふみふみこ …

祐喜代(sukekiyo)

PROFILE

PROFILE

祐喜代(SUKEKIYO)

大阪在住

社会に属しながら世捨て人として人生を謳歌するために、思索と創作表現などをしています。

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

ART、写真、小説を掲載しているHPはこちら↓

嗤う狐の藝術

祐喜代『星空文庫』ページ

嗤う狐のYOUTUBEチャンネルはこちら↓

ネットSHOP

SUKEKIYOオリジナルアートSHOP

『AMS』はこちら↓

https://ams.base.shop/

 

スポンサーリンク