エッセイ

女子ふんじゃった

投稿日:2020-07-26 更新日:

高校三年の時、何の前触れも無しにクラスの女子が実家に遊びに来た。

学校でたまに話す程度の仲ではあったけど、家に遊びに来る程の仲ではないし、非モテ男子だったからかなり焦った。

その時実家には母親と婆ちゃんもいた。

女の子遊びに来たよ♡」

母親はてっきり僕の彼女だと思ってしまったようで、白々しくニヤけていた。

わけがわからないまま、とにかく二階の僕の部屋に案内しようとしたら、母親が「ドアは開けたまま遊んでね」と揶揄うように言った。

アンタ、実家で堂々とSEXするような大胆な息子にオレを育ててないだろ?と、母親を軽く睨んで、照れながら彼女を部屋に通す。

なんで急に来たの?

暇だし、近くに寄ったから

え?あ、そうなんだ

全然納得の行かない理由だったけど、生まれて初めて自分の部屋に女子を入れたので、かなり興奮していた。

その子は作家の家田荘子みたいなベリーショートの髪型で、僕のタイプではなかったけど、目がクリっとしていて可愛いかった。

かなりマセてて、学校でタバコを吸ったりする少し不良っぽい感じの女子。

両親がいないらしく、孤児院で生活していたからか、活発で自由奔放な印象があった。

僕の近所に住んでいる同級生の家が、スクールカースト上位の溜まり場みたいになってて、そこによく出入りしているような子だった。

非モテなりに察すると、そこで誰かにフラれたか、トラブって仕方なく僕の家に辿り着いたのかもしれない。

それにしても女子と二人きりは気まずい。

良い部屋に住んでるね

うん。だと思う

僕の部屋は増築したばかりの新しい部屋で、広くてまだキレイだった。

ちょっと自慢してみたものの、その子の趣味とかほとんど知らなかったから、どうやって一緒に過ごせばいいのか、まったく見当がつかない。

とりあえずトランプする?

糞ダサい提案だな、と思ったけど、咄嗟に思いついたのがそれしかなかった。

しない

え!しないの? もうお手上げじゃん!

咄嗟に思いついた糞ダサい提案があっというまに却下された。

彼女に悪気がなくても、非モテの青春は無駄に傷つくものである。

打つ手無しで沈黙していたら、彼女が勝手に部屋の中を動き回って、いろいろ物色し出した。

エロ本が見つかる恐怖と、エロ本が見つかってしまった後のよくわからない興奮を抑えるために、とにかくソファでジッとしながら彼女の様子を見守っていた。

そして部屋を一通り眺めてから、彼女が僕の横に座って「じゃあトランプしよう」と言った。

最初に「しない」と言ったその心は何だったのか?

アタシが譲歩しないと何も始まらないみたいだね、みたいな、非モテに対する圧倒的な優越感を感じて、さらに臆した。

彼女に悪気がなくても、非モテの青春は無駄に傷つくものである。

当然ドアは開けたままだ。

ちょっと失礼」とか言いながら、そそくさとトランプを持ってきて、ババ抜きをした。

ババ抜きをさせていただいた、みたいな気持ちで対戦したからか、負けた。

自分の部屋なのにいつまでも緊張しているのは変だから、次は勝とうと思った。

オレ神経衰弱得意だから、神経衰弱しよう

いいよ

トランプをやる前から僕の神経は既に衰弱していたけど、勝てばどうにか治るかもしれないと思った。

負けたら罰ゲームね

え、何の罰?

人の家で完全にリラックスしている彼女が罰ゲーム付きの神経衰弱を要求して来た。

アタシ腰痛いから、アタシが勝ったら腰踏んで

それは僕にとって罰ではないような、よくわからない罰ゲームだった。

いいけど、本当に踏んでいいの?

本当に踏んでいいよ

そうやって始めた神経衰弱はかなり白熱した。

そして彼女が勝った。

いや、たぶん僕の下心が勝ち、僕がわざと負けたのかもしれない。

じゃあ、踏んで

彼女がソファからベットに移動して、うつ伏せに寝そべった。

ドアは当然開けたままだ。

別にSEXするわけじゃないからいいか、と思ったけど、このシチュエーションを母親が見たら確実に勘違いはするだろう。

ちょっと、何ボーっとしてんの?早く踏んで

完全にリードされっ放しで、言われるがまま僕もベットに移動した。

どのへんを踏めばいいの?

腰。お尻のちょっと上

彼女のお尻がわりと大きかったから、彼女の言っている「腰」という部位がどこなのかわからなくなった。

緊張しながら、とりあえず腰だと思う箇所を足のつま先で軽く踏んでみる。

軽く踏んだ箇所から確実にお尻の弾力が伝わって来た。

張りがあるけど柔らかく、想像以上に温い。

今のお尻だと思うけど

ごめん

次はもうちょっと上の方を軽く踏んでみた。

お尻の弾力もありつつ、尾骶骨の硬さもあった。

そこでいいと思うけど、もうちょっと強く踏んでくれない?

言われるがまま、彼女でもタイプでもない女子の腰を踏んでいるこの状況は一体なんだろう?

疑問符だらけの展開だけど、心なしかさっきより落ち着いて来た。

強く踏んでも大丈夫なの?

大丈夫だよ

大丈夫と言われても、小柄な女子だからやっぱり怖い。

どれくらいの体重をかけて踏めばいいのかわからなかったけど、とにかく天井に両手をつけて、僕の全体重が乗っからないように配慮しながら、慎重に踏んだ。

う、うふん。それくらいでいいと思う

うつ伏せになって目を閉じている彼女が、喘ぎ声みたいな吐息を漏らし出した。

ドアはずっと開けたままだ。

この声が階下にいる母親の耳に届いたらマズイ。

いや、かなりとマズイと思う。

アンタの息子、SEXはしてないけど、非モテのくせに今かなり大胆な事をしてます。

うふん」と彼女が漏らす声と、階下から聞こえてくる微かな物音に気を遣いながら、彼女を踏み続けた。

だんだん慣れて来た。

大人の階段のぼるぅ♪ 君はまだシンデレラっさぁ♪ と、軽くハミング出来るくらいの心の余裕も出て来た。

そうやって調子に乗ったからか、「踏むのヘタだからもういいよ」と彼女に言われ、妙な施術があえなく終了した。

解放感と少し残念な気持ちを引きずって、ソファにぐったりする。

それから一時間くらい彼女としゃべったり、適当にCDをかけたりして一緒に部屋で過ごした。

いつ帰るんだろう?と思っていたら、母親が二人分のラーメンを作って、僕の部屋に持って来てくれた。

「なんかいい感じじゃない♡」と言わんばかりに、母親の顔が完全にニヤけていた。

うちの実家はラーメン屋なので、なんとか非モテ息子の株を上げようとしてくれたんだろう。

彼女も美味しそうに食べてたから株は上がったと思う。

食べ終わってから彼女が「ごちそうさま」と言って帰った。

CDはまだ鳴っていたけど、なんだか部屋が妙に静かになった。

その後付き合ったりするのかな?と期待してみたりもしたけど、学校に行ったらわりと普通の感じで、今までどおりの関係に戻っていた。

あの日は、一体なんだったんだ?

彼女に悪気がなくても、非モテの青春は無駄に傷つくものである。

後日彼女は「アタシ動物好きだから、ムツゴロウ王国に就職するつもりでいる」と、謎のカミングアウトをして卒業した。







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