エッセイ

新宿の夜の屁にこかされた

投稿日:2020-07-27 更新日:

僕は確信犯的に屁をこく人が嫌いだ。

正確に言うと嫌いだった。

トイレでたまに見かける「あっ」と吐息を漏らしてから、「ブッ」と屁をこくタイプの人。

「ブッ」と屁をこいてから「あっ」と吐息を漏らすのであれば、自分の不用意な行為を恥じている罪悪感のようなものを汲み取る事が出来るから許せる。

でも「あっ」と吐息を漏らしてから「ブッ」と屁をこくのは、屁をこく前提で尻の筋肉をあえて緩めているカウンダウンのような気がして許せない。

おならは万国共通の笑いだから」と、その場を和ませるために悪びれる事もなく屁をこく人も嫌いだ。

つまらないし、臭い。

「おなら」という可愛い子ぶった言い方もなんとなく許せない。

その強烈な臭いは「おなら」というライトな表現に見合っているだろうか?

一度考慮してみるべきだ。

握りっ屁に関しては、法で取り締まるべきだと思っている。

とにかく屁をこいたら万国共通で恥じて欲しい。

屁に対してそんな思想を持っていたからか、ある夜公衆トイレでかなり気まずい思いをしてしまった事がある。

友達と二人で飲み歩き、帰りに新宿西口の公衆トイレに二人で入った。

二人並んで小便をしていたら、近くで「あっ」という吐息が漏れ、「ブッ」と派手な音がした。

僕はてっきり友達が屁をこいたと思い、「臭せぇな、確信犯的に屁をこくなっ!」と反射的に罵った。

まだ臭いは僕ところまで届いていなかったけど、音だけで怒りが先行した。

そしたら僕の後ろの個室から、か細い声で「……すいません」と声がした。

慌てて友達の方を見たら、友達が声を押し殺して笑っている。

間違えたのだ。

トイレには僕と友達だけしかいないと思っていた。

そんな中、口汚く罵り合える貴重な友達に向かって放った一言だったから、かなりきつい言い方をしていたと思う。

個室にいる人にしたら、素行の悪い酔っ払いに絡まれたくらいの衝撃があったはずだ。

酔っぱらった小心者が、個室で蹲っているもう一人の小心者を傷つけてしまう。

こういう気まずい状況を打破するのが僕は苦手だ。

時を戻してなかった事にしたい。

でもそれは無理だから「こちらこそ、すいません!」と心の中で謝罪して、手も洗わずそそくさとトイレを出た。

追って来た友達が僕の方を見ながら、腹を抱えて笑っていた。

僕はわりとこういうつまらない些細な出来事をいつまでも引きずるところがある。

だから僕はそれから他人の屁に少し寛容になった。

そして自分だけは絶対に人前で屁をこかないと、その時決意した。







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