エッセイ 哲学・思想

アラレちゃんの秘密基地

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僕の実家の前に山が三つあって、そのうちの一つの山の頂上に赤い屋根の神社が見える。

小学校一年か二年の時、友達がその赤い屋根の神社の下に「アラレちゃんの秘密基地がある!」と、かなり大真面目な顔で言って来た。

その山は当時小学校低学年だった僕らには未知の場所で、親や近所の大人たちに「子供だけで登ってはいけない山だぞ」と口酸っぱく言われていた。

僕もその友達も活発な子供だったので、ずっとその山の赤い屋根の神社まで行ってみたいと思っていた。

アラレちゃんの秘密基地。

そんなものが本当にあるならなおさら行ってみたい。

だからもう迷わず「行こう!」と思った。

もちろんアラレちゃんの秘密基地が本当にあるなんて思っていなかった。

大真面目な顔で「ある!」と言い張る友達も、本当にあるなんて思っていなかっただろう。

僕たちは二人とも、とにかくその山に登る理由が欲しかった。

当時毎週水曜日の19時に『Drスランプ・アラレちゃん』のアニメがテレビで放送されていた。

破天荒なロボットの女の子が主人公のアニメ。

僕たちはそれをいつも観ていたから、友達が「アラレちゃんの秘密基地がある!」と言った時、すんなりそのイメージが僕も浮かんだ。

神社の下に潜ったら、大きな穴が空いていて、そこに落ちると計器やらモニターやらボタンだらけの空間がある。

そしてアラレちゃんを作った博士であり、パパである則巻千兵衛が一人でそこにいる。

そんなイメージが鮮明に浮かんで来た。

山菜取りに行った友達の親父がなぜか神社の床下の穴に落ちてたまたま見つけたらしい。

僕は友達の嘘を信じ込んで、休みの日に二人で山に登った。

毎日コツコツお菓子をリュックに貯め込み、万が一熊が出た時に戦うための木の棒を携えて、親に内緒で家を出た。

夢を見る力。

子供頃、それは当たり前にあった。

嘘と承知で信じ込んで、とにかく自分たちが楽しいと思う事に夢中になっていた。

どういうわけか?大人になってから、それが当たり前に出来なくなってしまった。

アラレちゃんの秘密基地。

もう聞いただけで馬鹿馬鹿しいでしょ?

でもそのイマジネーションは最高だった。

僕たちは大人の足で小一時間くらいかかる山を汗だくで登って、神社の下へ潜り、ちゃんと穴を掘った。

たぶんこっちだ」とか「いや、あっちの凹んでいるところが怪しい」とか言いながら友達と二人でちゃんと探した。

そして疲れた友達が「秘密基地だからたぶん時々しか行けないんだ」と言って、僕たちは頂上で持って来たお菓子を食べ、二人で満足しながら一緒に山を下りた。

親に言ったら怒られるので言わなかったけど、家に着いた時、夢を追って冒険した自分たちの事がとても誇らしく思えた。

何もない田舎だけど、創造力を発揮して毎日楽しく遊んでいた。

大人の僕にはもう真似できないクリエイティブな能力をフルに使っていた。

面白きなき世を面白く 住み成す者は心なり」ではないけど、なんかそんな子供の頃の感覚を急に思い出したからちょっと書いてみた。

ただそれだけ。







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