嗚呼、孤立無援の花、咲くばかり、咲くばかり。
狭い部屋でROCKを聴きながら油絵を描きまくっていた20代前半、このフレーズが身に染みた。
eastern youth。
このバンドと出会ったのは、仙台のアーケード街にある新星堂。
パンク系のコーナーの新譜に、武骨な坊主頭の男が描かれている版画のジャケットのCDがあったので手に取ってみた。
連れの友達が「そのバンド格好良いよ」と言うので試聴。
確かに、確かに!!
僕の好きな森田童子の「たとえば僕が死んだら」のカバー曲も入っている2ndアルバム。
大ジョッキに男気を並々注いで溢れさすような熱があり、一言で言えば「エモい」
そもそもこの「エモい」「エモーショナル」という言葉と概念は、明確な意味を未だ調べずしてeastern youthがその迸る楽曲を通して教えてくれた。
当時の年齢は知らないけど、見た目は全員おっさんの3ピース。
オフィスで頭脳労働するような柄でもないし、基本的に人が苦手なので接客業も避けて肉体労働のバイトばかりしていた僕は、eastern youthが打ち出す汗臭くて泥臭い世界観に心酔した。
「オレは腐っても芸術家だ!」
理解されたら負け、売れたら負けだとeastern youthを聴く度に息巻いていた。
「でもお前なんかまだ青い」
彼らのエモーショナルはそんな感じで僕を突き放してくる時もあり、現実に打ちのめされて意気消沈する度に這い上がる怒りもくれた。
eastern youthは僕が敬愛する佐伯祐三という画家を教えてくれたバンドでもある。
HMVの店頭に堂々と掲げられた3rdアルバムのポスターが佐伯祐三の「立てる自画像」で、その絵にも感化された僕は、以後野獣派を気取って、絵の具を惜しまずに、毛羽だった筆とペインティングナイフでキャンバスに街や人物を描き殴った。
そして未だ何者にもなれずに生きている。
本当に世界は割れ響く耳鳴りのようで、やりたい事はいっぱいあっても、時間もお金もそんなに余裕がない状況。
何者にもなれずに、ただ生きて行く覚悟だけは余儀なくされている。
東北出身で独身、現在42歳。
まだまだ青いからeastern youthは僕にもピッタリなバンド名だ。
【特に好きな3曲】「踵鳴る」「黒い太陽」「破戒無慙八月」