芸術

友川カズキ

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友川さんについては以前『一人盆踊り』の記事でも触れた。
友川さんの歌は地元で聴くとより迫って来る。
東北の田舎。
友川さんの故郷と僕の故郷は近いので、友川さんの訛りまくったクセのある歌い方は全然苦にならない。
リアルな訛りだから聴いていて親近感が湧くけど、恥ずかしいとも思う。
地元にいた冬、仕事に向かう車の中で友川さんの「冬は莫迦くへなぁ」を聴いていたら事故った。
大雪の猛吹雪の朝で、乗っていた軽自動車のタイヤが道路に出来た雪の轍を踏んでしまい、対向車線にスリップして、そのままなす術なく路肩を越えて田んぼに落ちた。
幸い対向車がなく、田んぼの雪が衝撃を和らげてくれたので、僕も車も無事だった。
初めての事故で生きた心地がしない車内に「冬は莫迦くへなぁ、冬は莫迦くへなぁ」と、友川さんの声だけが響く。
本当に「莫迦くへなぁ」と思い、父親に反対されて断念した沖縄移住を、その時もう一度決意した。
僕は地元に帰ると、家に引きこもる。家族と友人以外の人たちに会いたくないからだ。
車で遠出して買い物に行く時と、友人と飲みに行く時くらいしか家から出ない。
地元の事が嫌いなわけではないけど、そんなに好きでもない。
地元より他所の土地で暮らしている年月の方がもう長い。
だから懐かしそうに僕に微笑みながら話しかけて来る人が誰だか全然わからなかったりする。
その忘却の彼方に追いやった人たちに「結婚はまだがぁ、仕事は何やっでる?」と訊ねられると、何故か癪にさわり、いかにそれが悪気のない親身な問いであると分かっていても、余計なお世話だと反発したくなる。
こんな感じだから小さい頃から自分のような人間は田舎のムラ社会では生きていけないと思っていた。
地縁が濃いと、思うように自分が出せないというか、ありのままではいられない。
共同体の一員としての自分らしさを強いられているような気がして息苦しい。
誰々の家の者だ、誰々の息子だ、とほとんどの人が僕の事を知っている。
それに応じて家の恥にならないように振る舞う僕の事しか知らない。
変わった趣味、おかしな行動を取ればすぐに噂が広まり、干渉が入り、監視される。
田舎は異質な者やマイノリティな存在に対して、都会ほど寛容ではない。
都会も寛容ではないのかもしれないけど、他人に無関心なところがあるからまだマシだと思える。
田舎は異質なものが怖いから矯正しないと受け入れない。
だから共同体に異質だと判断されないよう、周囲の目に合わせて親の目が光る。
ヒッピーでも瘋癲でも乞食でもないのに後ろめたい。
死人でもあるまいによ
地獄でもあるまいによ
屠殺場でもあるまいによ
そう歌う友川さんの心境に似たものが、地元にいると微かに沸き起こって来る。
見つかって排除されるくらいなら自ら出ていく。ここでは一生日陰者だ。
高校卒業後、捨てるように地元を出た。
やはり一人暮らしの方が気が楽だった。
捨てても故郷は故郷だから、家族に会いたいとか友達に会いたいとか、理由を見つけては度々帰る。そして帰るとそこはやはり自分の居場所ではないと再確認する。
友川さんはどうだろう?
たまに故郷に帰るんだろうか?
もうとうの昔に故郷を捨てた人だろうか?
もうとうの昔に故郷に捨てられた人だろうか?
友川さんには故郷が遠い日陰者同士のシンパシーを勝手に感じてしまう。
訛りが取れずにずっと歌い続けている友川さんの姿は見苦しくもあり、意地らしくもあり、心地良くてカッコいい。
友川さんは僕にとって、何やっているのかよくわからない消息不明の親戚みたいな人だと思っている。

【特に好きな3曲】「生きてるって言ってみろ」「井戸の中で神様が泣いていた」「一切合財世も末だ」







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