オカルト・スピリチュアル

『オカルト原風景』夜鷹と産女

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田舎特有の事情だと思うけど、親や近所の大人が子供をしつける時、迷信や妖怪を絡めて諭す事がよくあった。

山と田畑の長閑な風景の中にこの世と地続きの目に見えない世界があって、大人の言うことを聞かないと、その目に見えない世界の力や存在によって「怖い目に遭う、大変な目に遭うぞ」という、半ば脅しのようなオカルト洗脳教育を、田舎の僕たちは小さい頃に受けて来た。

たとえば外に遊びに行った時「夕方まで帰って来なかったら、あの山から真っ黒い大きな夜鷹が飛んで来てさらわれるぞ」とか、食事の席で「茶碗のご飯一粒でも残したら目が見えなくなるぞ」とか、そんな感じで親たちに小言を言われる。

僕の地元では夕方5時くらいになると、町内放送で「七つ子」が鳴る。

カラスなぜ啼くの、カラスは山に

一人で外に遊びに行こうが、友達と遊びに行こうが、僕の地元の子供たちは、この「七つの子」が鳴り出したら、みんな一斉に家に帰る。

僕たちはこの歌に出て来るカラスと、親たちが小言で言う「夜鷹」の存在をごっちゃにして、この歌が鳴り終わるまで家に帰らないと、大きなカラスが飛んで来て山に連れていかれると本気で信じていた。

実際には鳴り終わっても何も出て来ないけど、「七つ子」が鳴ると、急に夕暮れの山の気配が何か不気味なものに変わったような気がして、どれだけ遊びが楽しくても、すぐにみんな「バイバイ!」と叫んで、とにかく必死で家に帰ろうとする。

朝、学校に行く時も、外でカラスが大勢で鳴いていたりすると、「今日はカラス鳴きが悪いから、気をつけて学校に行けよ」と祖母に言われる。

祖母にとってカラスがギャーギャー騒ぐように鳴いている朝はとても縁起の悪いものらしく「人が死ぬ知らせだ」と、いつも警戒していた。

家族の中でも一番最年長にあたる祖母の真顔の迷信には、根拠はないけど年季の入った迫真の説得力があって怖い。

実際にはないもの、いないものに怯えたり、不安になったりするこの心境から逃れる方法は、自分の親や地元の大人たちの小言を従順に守る事。

それでも子供だからつい忘れて守らない時もあったけど、祖母の言いつけだけはよく守った。

僕の実家は僕が中学くらいの時まで汲み取り式の和式便所だったから、この便所の暗い穴の中にも妖怪がいる。

用を足してちゃんとケツ拭かなかったら、便所の穴から産女が出て来て、ヘラでケツを叩かれるぞ

祖母も両親も大真面目な顔でそう言うから、臭くて暗い便所の穴から、白い女の人の手が「ヌゥ~」と伸びて来る様子をリアルに想像する事が出来た。

本家の古い屋敷の便所なんかは、みんながいる茶の間からだいぶ離れた薄暗い場所にあったりするから、子供の時は用を足したくなっても怖くて一人で行けなかった。

悪さをすれば神様が罰を当てる。妖怪が悪戯しに来る。

一度信じれば、田舎の土地や古い建物がそれを実感させる雰囲気をどんどん醸成させて、風光明媚で長閑な田舎が、とても神秘的だったり怪奇だったりする場所だらけになる。

だから周囲に人が誰もいなくても、悪さをすればすぐに畏怖や不安をともなう自責の念に駆られて、自分の行動を改めたり律したりする事が出来た。

僕たち田舎の人間はそんなオカルト洗脳教育を受けて大人になった。

それが良いことかどうかわからないけど、効果は確かにある。







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