哲学・思想

鬼滅の愛着スタイルと克服法

投稿日:2021-08-17 更新日:

僕は『鬼滅の刃』が好きだ。

その最大の理由は『鬼滅の刃』が愛着障害をテーマにした作品だからだと思う。

いろんなジャンルの物語があるけど、登場人物たちが愛着障害による生きづらさを抱えている作品は多い。

人間の個人的な悩みや社会問題の根本原因が「愛着障害」であるなら、クリエイターが表現したいテーマも、意識的であれ無意識的であれ、愛着に関するものに帰着するだろう。

アニメやマンガが好きなオタクの人たちにアダルトチルドレン的な傾向が見られるのも、子供時代に感じた寂しさや辛さをアニメやマンガの世界に浸る事で埋めて来たからかもしれない。

好きなアニメやマンガの世界が大人になってからも拠り所になり、その人の人生を支えている場合もあるから、僕は他人の好きな作品を無闇に批評したりするのをなるべく控えるようにしている。

僕個人的にはクリエイターの作家性が感じられるような作品が好きだけど、どの物語にも人の心の傷を癒したり、救ったりする力があるなら、大衆娯楽でも純文学でも優劣はつけない。

作品世界に没入して、感動して、それを現実世界に持ち帰って、日常に何か変化を起こしたい。

僕はそんな感じで物語を楽しんでいる。

『鬼滅の刃』が大ヒットして、多くの人の胸に刺さったのは、それだけ大勢の人が愛着障害による生きづらさを抱えているからだと思う。

そして『鬼滅の刃』は愛着障害を知る教材として、すごくわかりやすい。

鬼殺隊と鬼。

この関係はたとえると、愛着障害を克服した者、あるいは克服する努力をしているのが鬼殺隊で、克服出来なかった者、あるいは愛着障害に気付く事なく絶望してしまった者が鬼という見方が出来ると思う。

それぞれのキャラに纏わるエピソードの中に、人が愛着障害になる要因と、それを克服するための考え方、行動が示されていたりする。

おそらく原作者の吾峠さんも、愛着に問題を抱えていた人で、その克服のために愛着障害について学び、それを広く世に伝えるため、『鬼滅の刃』を描き始めたのかもしれない。

そこで僕なりの見解にはなるけど、鬼殺隊の主要キャラの特徴から、そのキャラが身につけた愛着スタイルを診断してみた。

愛着スタイル診断

愛着スタイルは、その人個人が親とどのように接して来たかを表現したもので、親以外の人たちと人間関係を構築する時も、その表現スタイルを無意識が採用する。

人との接し方がスタイルによってパターン化しているので、自分のスタイルや相手のスタイルが違えば、ギクシャクしてうまくいかなかったりする。

細かな分類までは難しいけど、身近な人と接してみても、安定型かそうでないかくらいはだいたいわかる。

安定型は親との関係が安定しているスタイル。親に程よい愛情を与えられているから、不足感がなく、自分が好意を持つ相手を信頼できる。その相手が自分をいつまでも愛し続けてくれることを確信し、自分が困ったときや助けを求めているときは、それに必ず答えてくれると信じている。だから、気軽に相談ができる。

竈門炭次郎
竈門禰豆子
煉獄杏寿郎
宇随天元
悲鳴嶼行冥
産屋敷輝哉

安定型でも、親との悲しい別れなどを体験する事によって、後天的に愛着スタイルが変わったりする場合もある。

【立志編】の炭治郎と禰豆子は親兄弟を鬼に惨殺されるという非常に辛い体験をしているので、元々の安定型から一時的に不安定な愛着障害に陥ったケースだと思う。

同じ安定型である煉獄杏寿郎と宇随天元の任務に同行した貴重な体験が、炭治郎と禰豆子が陥った不安定な愛着を再び安定したものに戻した印象があった。

柱最強と言われる悲鳴嶼行冥と鬼殺隊を統率する産屋敷輝哉は、愛着障害を克服するために必要な【安全基地】の役割を担っている器の大きさを感じさせてくれた。

他者への共感性に優れていて、鬼殺隊全メンバーを無条件に信頼し肯定している。メンバーが困った時は、彼らに必要な的確な応答性(アドバイス)を発揮して、メンバーが独自の判断で責任を持ち、自立した行動が出来るように支えている。

【不安型】

不安型は親に中途半端な愛情を注がれて常に不安を感じているため、愛着を求めて親や他人に依存してしまうスタイル。

我妻善逸
甘露寺蜜璃
不死川玄弥

世間一般的に“メンヘラ”と呼ばれる人の多くがこのスタイルに該当すると思う。
すぐに人を好きになって相手に依存しようとする善逸と甘露寺なんかは典型的だ。
相手の評価が自分の評価になるので、他人の顔色に合わせて、相手に都合の良い自分を装ったりする。
それで相手が自分の気持ちに答えてくれなければ癇癪を起こして相手の気を引いたり、相手に対する執着心が強いあまり、ストーカーになりやすかったりもする。

【回避型】

回避型は親との愛着に期待が持てなかったので、親や他者との関係にあまり興味がなく、人より物に興味を示しやすいスタイル。

嘴平伊之助
時透無一郎
栗花落 カナヲ

集団に馴染まず、常に単独行動。
感情の起伏も少ないので超然とした印象がある。

伊之助は生まれてすぐに親と死別したから、動物の赤ん坊のように野性的な本能で、人間の世話になる事なく、常に自立して生きて来た経緯がある。

親に関心を持たれず、放置されるような環境にあった者は、一人で生きていく強さを身につけなければいけないので、他者に協力したり、他者に助けを求めたりする事を拒むようになる。

その結果、自分の心身の不調に気付きにくくなったり、ピンチの時に助けてくれる存在がいないので、仕方なく孤軍奮闘した結果、命を落としたりしやすい。

【恐れ・回避型】

恐れ・回避型は過干渉な親との関係に不安があり、愛着を求めるも、それが期待出来ない環境にあったので、親や他人に嫌われる事を恐れて親密な関係を回避しようとするスタイル。不安型と回避型の二面性があるから、人づきあいに混乱が生じ、人を遠ざけて、自分が望む幸福を自己破壊したりしてしまうため、周囲に“ツンデレ”だと思われてしまう人が多い。

富岡義勇
胡蝶しのぶ
不死川実弥
伊黒小芭内役

僕自身の愛着スタイルでもあるんだけど、不安型と回避型のどちらにも分類するのが難しかったキャラを恐れ・回避型に入れてみた。
富岡義勇のクールで一匹狼的な単独行動は回避型の特徴を示しているようでもあるけど、心のどこかで常に信頼出来る仲間を求めている哀愁も感じた。

他3名も基本的にクールで集団行動が苦手な印象があるので回避型にも分類出来るけど、回避型ほど超然としていられるような様子まではなかったので恐れ・回避型に入れた。

ただ胡蝶しのぶに関しては女性特有の共感能力と協調性があるから、男性キャラよりは人づきあいが器用に見える。

愛着スタイルは基本的に上記した4つのタイプに分類され、診断するとそれぞれのスコアが出る。

そのスコアの差異がその人の独自のスタイルになるので、同じスタイルでも生きやすさ、生きづらさはそれぞれ違う。

以上が鬼滅のキャラたちの愛着スタイル診断。

愛着スタイル診断

次に、鬼殺のキャラたちが愛着障害によって生じた自分の欠点や弱点を克服した方法について書いてみたいと思う。

【鬼滅の“呼吸”とメンタライジェーション】

鬼滅の刃には“呼吸”と呼ばれる、剣の流儀のようなものがある。

水の呼吸、炎の呼吸、雷の呼吸、風の呼吸など、それぞれの剣士が先達の柱の下で修行をしたり、単独で修行するうちに独自の呼吸を体得して、それぞれいくつかある型を技として繰り出し、敵と戦う。

呼吸は人間が普段無意識に行っているものだけど、自分で意識して制御する事も出来る唯一の身体活動だ。

恐怖、不安、怒りなどの感情が発生した時は、呼吸が無意識に荒くなり、戦う、逃げるなどのアクションを自動的に促そうとする。

鬼滅の呼吸は、感情に従ったその無意識のアクションを意識して、自分と相手の状況、心境を客観的に見るために行う。

自分と相手の状況、心境が正確に理解出来れば、その場の状況や相手にとって最適解になる言動や行動が可能になる。

鬼滅のように相手が敵であれば呼吸によって、相手が不利になる状態を意識的に作り出し、弱点を見つけて、有効な技を出せるようになる。

心理学では、“メンタライジェーション”と呼ばれる、他者との愛着が安定するために重要な鍵を握る認知共感能力だ。

この能力を安全基地になってくれる人を通し、愛着障害にある人が訓練して獲得する事で、徐々に自分の愛着スタイルが安定したものに変わって来る。

安全基地になる人は当然自分の親がベストだけど、親が安全基地として機能出来ない場合は、自分が親しいと感じている友人、恋人などのパートナー、職場の上司、同僚、カウンセラーや精神科医などにサポートしてもらうのが良いと思う。

それも頼れない状況であれば、自分の気持ちを客観的に表現するためのSNS投稿、日記やブログ、創作活動なども有効な手段になる。

鬼滅の刃であれば、柱やお館様(産屋敷輝哉)が安全基地として鬼殺隊員の面倒を見てくれているので、愛着障害の者でも、その克服に向けた努力をする事が出来る。

鬼に噛まれた人間が鬼になるように、愛着障害は親から子へ伝播する。

愛したくても愛せない切実な理由があったのなら、親のせいでも子のせいでもない。

愛着障害という病が時代や社会がもたらす不運なら、もう誰のせいにしても仕方がないから、とにかく改善策をどんどん見つけて実践していくしかない。

愛情不足のハンディを背負った人生だと腹を括って、残りの人生を賢明に生きていくしかない。

人並みの幸福は望めなくても、この奇妙な病を背負って生き切った事を誇りに思う事が出来れば、最高に感動的な人生のエンディングになると思う。

鬼滅の鬼たちの境遇に涙して同情したり共感してくれる人だっているんだから、自分の抱える生きづらさに同情したり共感してくれる人だってきっといる。

そういう人に出会えただけでも「あ、自分は理解されてる、愛されてる」って思っていいんじゃないかな?

かなり長い記事になったので、最後に愛着の問題を教えてくれた精神科医で作家の岡田尊司さんの言葉を引用しながら締めたい。

個人の時代と呼ばれる今後の社会は回避型に向かっていく兆候があり、人づきあいに対して、喜びよりも苦痛を感じやすい人が増えていく。

孤独、寂しさ、空虚感が、人々の心に広がり、何も対処しなければ、社会全体が陥っている愛着の崩壊過程に呑み込まれてしまうだろう。

僕も勉強中なので、緩い診断と拙い説明で申し訳ないけど、アニメやマンガでも愛着障害については学べるし、参考になりそうな動画も挙げておくので、気になる人はぜひ見てみて欲しい。

大人の愛着障害

【愛着障害】愛されなかった人が生まれ変わるための5つのステップ

いつも読んでくれてありがとう。







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