哲学・思想

元カノちゃん

投稿日:

彼女いない歴がもう13年になる。

恐れ回避型の愛着スタイルは恋愛が難しいので、その辺の事情を元カノちゃんとの思い出を通して綴ってみようと思う。

当時自分の愛着スタイルが分かっていたら、もう少しうまくやれたかもしれない。

元カノのAちゃんとは、僕が30歳で上京した時に知り合って付き合った。

バイト先の先輩がAちゃんを紹介してくれて、二人きりで会う事になり、新宿アルタ前の広場で待ち合わせして、Aちゃんがよく行くBARに行った。

Aちゃんは美大出身で、サッカー関連のサイトを運営する会社で働きながら絵を描いていた。

将来アーティストになりたいらしく、仕事で忙しい中、作品制作も頑張っていた。

僕もARTが好きだったから、Aちゃんとは気が合いそうな気がした。

Aちゃんは顔立ちも服装もあまり派手な感じではないけど、性格がおっとりしていて、なおかつ芯が強い。

例えると、『魔女の宅急便』に出て来るキキみたいな女子。

叔父と二人で住んでいる千葉の実家で黒猫を飼っていた。

話す話題とペースが合うからか、一緒にいると居心地が良かった。

初めて二人で会った時から、似た者同士の親近感があって、なんとなくうまく行きそうだな、と思った。

僕は当時吉祥寺に住んでいて、Aちゃんは千葉の実家住まいだったから、会うのは二人の休みが合う土日が多かった。

お台場に行ったり、立川にある昭和記念公園でデートしたりするうちに、「ああ、これはもう付き合ってる感じだな」と思った。

僕は東京に親しい友だちがいなかったし、Aちゃんも交遊関係がそんなに広くないから、僕とAちゃんの仲を煩わせるような人間関係は特になく、付き合うのが楽だった。

改めて告白する必要はなさそうだったけど、二人で上野に行って、その夜に居酒屋で飲んだ時、一応確認の意味で「付き合おう」と、僕から言った。

もう付き合ってると思ってたよ

Aちゃんのその返事を聞いて、やっぱりそうか、と安心したのを憶えている。

頼れる人が誰もいない東京で彼女が出来た!

すごく嬉しかった。

ただその後、僕とAちゃんの距離感はあまり変わらなかった。

会うのは相変わらず休日だけで、メールや電話の回数も特に増えるわけでもなく、一緒に買い物したり、食事したり、たまにAちゃんが僕の部屋に泊まりに来たりするくらいの交際。

付き合うまでがピークみたいな感じで、それ以上仲良くなるわけでもなく、ケンカするわけでもなく過ごした。

これでいいのかな?

この感じがずっと続いたら結婚するのかな?

一人の時よりは楽しいし、寂しくないから特に不満もない。

でもカップルとしては何か物足りないような気もしていて、改めて付き合う事になってから、急にこの関係が長く続かないような不安が時々襲って来た。

僕もAちゃんもお互いを束縛するようなタイプじゃないし、会ってない時は自分の時間を大事にしているから、何も問題はないはず。

ただAちゃんは僕より歳が一つ下で、結婚とか、出産とか、年齢的な焦りみたいなものがあるのか、一向に進展しない二人の関係に多少不満があるようにも見えた。

僕はAちゃんとただ二人でいれればよかったので、Aちゃんに対してや二人の関係に対して、「もっとこうしたい、ああしたい」みたいな要求を何もしなかった。

僕は小説家になりたくて上京したから、バイトして、小説書いて、Aちゃんに会う。

それ以外にやる事はなく、それ以外は何もこだわらなかった。

二人の将来の舵取りをAちゃんに任せている。

当時はそんな意識なかったけど、今振り返ると、そうだったんだと思う。

僕は波風立たないように、二人で行きたい場所、やりたい事をほとんどAちゃんの意見に合わせていた。

自分の行きたい場所ややりたい事は、自分一人の時にやればいい。

僕は自分の欲求を抑えて、Aちゃんとそういう態度でずっと交際していた。

ある日池袋のゲームセンターに行った時、占いのマシンがあったので、面白そうだから、二人の相性を占ってみた。

彼氏より彼女の方が相手の事を好きみたいです

そんな結果が出た。

僕は二人とも同じくらいの気持ちだと思っていたので、その結果が少し意外だったけど、Aちゃんの方は少し寂しそうな顔で納得しているようだった。

そういう実感があるのかな?

気になったけど、なんか気まずかったので確認は取らなかった。

付き合ってるのに、なかなか心開いてくれないね。アタシに不満とかない?言いたい事あったら言ってくれていいんだよ

ある日、Aちゃんにそんな事を言われた。

心を開かない。

そんなつもりは全然なかったので、これはかなりショックだった。

でもAちゃんの言うとおり、僕はあまりAちゃんに自分の気持ちを積極的に話さなかった。

二人の関係を良好なまま維持するためには、自分の気持ちなんか必要ないと当時の僕は思っていて、Aちゃんに嘘をついたりもしないけど、Aちゃんに何か不満があっても、自分の気持ちはなるべく言わないようにしていた。

嫌われたくないし、別れたくない。

見捨てられたくないから、我慢出来る事は我慢して、このままの感じでずっといたい。

Aちゃんはそういう僕の無意識の中にある不安や葛藤を、「心を開いていない」という言葉で言い当てた。

今ならそれがAちゃんの僕に対する好意から来る言葉で、二人の絆を深めるために言ってくれた事だと理解出来るけど、当時は分からなかった。

そして言いたい事があっても、Aちゃんにどう伝えたらいいのか、いつも悩んだ。

それからしばらくして、Aちゃんが美大時代の仲間と横浜でグループ展をやる事になったので、見に行った。

Aちゃんが美大の仲間に僕を紹介したいと言っていたから、途中デパートでお菓子の差し入れを買っていき、ギャラリーへ向かった。

もらったDMの地図を見ながら、アパートの一室に入ると、狭い空間に「本」を題材にした作品がいくつか展示されていた。

制作したアーティストがほぼ全員在廊していたので、狭い空間がかなり密だった。

その中にAちゃんがいたので、「来たよ」と声をかけ、僕の事をみんなに紹介してもらった。

それから作品を見て回り、「面白いね」とAちゃんに簡単な感想を言った。

僕の性格上、ARTの感想をアーティスト本人に言うのは難しい。

ARTは好きだけど、画や造形、そのコンセプトに衝撃を受けたり、面白味を感じる作品は正直少ない。

鑑賞しても何も感じない場合がほとんどで、そういう時にアーティスト本人がギャラリーに在廊していると、なんか気まずい思いをする。

僕は興味が湧いたもの、感動を覚えた作品についてしか感想を言う事が出来ないから、何も感じなかった時は、労いの意味も込めて「面白かった」と一言だけかける。

正直Aちゃんのグループ展には何も感じなかった。

でもこれは僕の感性の問題でもあるし、みんな目標を持って真剣に制作しているのは伝わって来たから、そこには配慮したかった。

作品を見終わると、どうしたらいいのかわからなくなった。

大した感想もなく、楽しそうに談笑しているグループの輪に入るのは申し訳ない。

用事があるから、そろそろ行くね

え?…あ、うん

Aちゃんにそう言って、アパートを出た。

アパートを出た時、こんな感じで付き合ってたらダメになるな、という予感がすごくした。

Aちゃんは絆を深める努力をしているのに、自分はそれに応えようとしていない。

帰り道の赤レンガ倉庫で、お互い気を遣わず、自然に楽しそうにしているカップルたちを見て、すごく羨ましい、と思った。

言いたい事を言って、ふざけあったりして、めんどくさいやりとりもいっぱいして、どんどん進展いくカップル。

どうやったらあんな感じになれるんだろう?

相性の問題なのかな?

本当はAちゃんの事好きじゃないのかな?

彼女なんていらなかったのかな?

疑問が次々と浮かび、頭がごちゃごちゃして、もうダメかもしれない、と落ち込んだ。

恐れ回避型の愛着スタイルは、自動思考でよくこういう事が起こる。

関係を続けて進展したい気持ちと、終わらせて楽になりたい気持ちが同居している状態の中で迷い続けてしまう。

進展したければ、その方法を考えればいいし、方法がなければ、無理せず諦めればいいんだと思うけど、その決断がなかなか出来ない。

そして相手の気持ちを汲み取る余裕がなくなり、自分の気持ちも分からなくなる。

これまでの恋愛傾向を振り返ってみると、いつもそんな感じのパターンに陥ってしまっている。

愛着障害の怖いところは、それが自分の意思ではなく、子供の頃に学習した人との関わり方を、成人後もパターンとして再現してしまう事だ。

容易ではないけど、愛着障害を克服するには、ゆっくり時間をかけて試行錯誤しながら、人との関わり方を学び直す必要がある。

グループ展が終わり、仕事と制作の忙しい日々から解放された事もあってか、Aちゃんが箱根か伊豆の温泉に行こうと誘って来た。

なかなか進展しない2人の仲をより親密なものにするイベントが欲しいと思ったのかもしれない。

だから「僕も行きたい」、と思った。

一緒に旅行して何かを変えるチャンスだと思った。

表参道のレストランでAちゃんが持って来た旅行のパンフレットを見ながら、2人で日にちの計画などを立てた。

その時、先日見に行ったAちゃんのグループ展の感想を正直に言ってみようと思った。

旅行に行く前に言いたい事を言い合える関係性になった方が旅行も楽しくなる。

そう思って、これまで抑圧していた不満もこの機会に言ってみる事にした。

あのさぁ…

それから続いた僕の言葉は思いのほか語気が荒く、今まで抑えていた気持ちが一気に溢れてしまったような感じだった。

Aちゃんは、そんな僕の様子にただ圧倒され、「急にどうしたの?」と、動揺しながら聞いていた。

それからだんだんAちゃんの機嫌も悪くなって来て、今度は僕への不満を遠慮なくぶつけて来た。

和やかに旅行の計画を立てるはずが、突如ケンカになり、お互いに言いたい事を言った後は気まずさで押し黙ったまま、とりあえず食事を続けた。

…別れたいの?

しばらくしてから、Aちゃんが沈黙を破って悔しそうな顔でそう言った。

そこまで決意してAちゃんに不満をぶちまけたわけではないけど、動揺して返事が出来なかった。

別れたくない。

素直にそう言えばよかったんだと思うけど、何故か言えなかった。

…もう行こう

黙ったまま食事を終え、とにかく気まずかったので店を出た。

別れたくないけど、別れそう。

そんな不安しかなかった。

今日はごめんね、また電話する

何か一言そういったフォローすれば事態は変えられただろうけど、まるで意地を張るように嫌われたと思い込む。

もうダメだ、と思い込んでしまう。

…じゃあ、オレこっちだからバイバイ

…うん

それでAちゃんとの関係は終わった。

正確には恐れ回避型が引き起こす不安の自動思考に耐えられなくて、僕が終わらせてしまったのた。

嫌われるのは怖いけど、嫌われてしまえば、気持ちは楽になる。

そういう矛盾した思考や感情に陥ってしまうのが恐れ回避型だという事を当時理解していれば、改善策はいっぱいあったと思う。

Aちゃんと別れて、表参道から渋谷へ向かう途中、スモッグがかかった東京の夜空に、ぽっかり大きな穴が空いたような孤独が襲って来た。

未来に何も期待出来ない。

1人でとぼとぼ歩きながら、真っ暗な未来しか見えなかった。

新宿御苑でAちゃんとデートした時、庭の木の間に張っていた大きなクモの巣を、僕が拾った枝でふざけて壊した事があった。

その時Aちゃんは「可哀想だからやめなよ」と真顔で怒って、しばらく口を聞いてくれなくなった。

小さい生き物の命も大事にする優しい人なんだな、と思って、すぐに謝ったら許してくれた。

二人で御苑を歩きながら、Aちゃんと結婚した時の未来を想像して、楽しい時間もあったのに、僕はクモの巣みたいに、自分の手で呆気なくそれを壊してしまった。

ケンカして別れたその後、バイト先の先輩が僕たちの様子を気にかけてくれて、3人で会って仲直りはしたけど、彼氏彼女の関係に戻ることはなかった。

結果、Aちゃんは僕と別れてから他に良い人が見つかって結婚した。

相手がどんな人かは知らないけど、FacebookでAちゃんから結婚の知らせを聞いた時は元気そうだった。

そして何より幸せそうだったから、別れてよかったんだ思う。

そっちはどう?」と、気遣ってくれる感じとかは相変わらず優しいな、と思って、今はAちゃんと付き合えた事を光栄に思っている。

以上が僕の愛着スタイルが持つ恋愛傾向だ。

とにかく愛着障害を抱えての恋愛は難しいし、幸せな家庭を築くにも苦労が絶えないのは間違いない。

充実した人生を歩むのであれば、克服に向けて何かしら取り組みは必要だと思う。

恋愛でなくても、自分と相手の愛着スタイルを知る事は、いろんな面で円滑な人間関係を築くのに有効だと思うから、興味を持って学ぶ価値はある。

愛着診断テスト

いつも読んでくれてありがとう。







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