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映画『劇場版・機動戦士ガンダム』ニュータイプの憂鬱

投稿日:2021-12-23 更新日:

あらすじ

宇宙世紀0079。地球からもっとも遠い位置にあるスペースコロニー・サイド3は「ジオン公国」を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を仕掛けた。兵力差で連邦政府に劣るジオン軍は、人型兵器モビルスーツを投入。連邦軍と互角以上の戦いを見せ、戦争は膠着状態に入る。これに対抗すべく、連邦軍はMSガンダムを極秘裏に開発。ジオンに情報が漏れ襲撃を受けるが、偶然ガンダムに乗り込んだ少年アムロ・レイの操縦により、撃退に成功する。
連邦軍のパイロットとなったアムロは、ライバルたちとの戦いを通じ戦士として成長。
戦争を終結に導く。

原作:富野由悠季

2050年までに地球の人口は90億に達する。

ガンダムの世界で語られる宇宙世紀は、地球の人口が90億に達し、人類が宇宙に移住し始めた西暦を元年とする暦。

ZOZOの前澤さんが民間人で初の宇宙飛行を実現したニュースが話題になり、2050年までにこのまま人口が増え続ければ、リアルの世界でも人類がスペースコロニーに移住するような状況が現実味を帯びて来るかもしれない。

ガンダムの世界では宇宙に移住したスペースノイドの中から“ニュータイプ”と呼ばれる進化した人類が派生して、それまでの人類にはない特殊な能力や意識を獲得している。

要因としては地球とスペースコロニーの重力の違いや酸素量の違いなどが人間の脳に影響を与えるみたいな設定だと思うけど、移住した人類が地球をスペースコロニーから俯瞰するようになった結果でもあると思う。

俯瞰すると、人は世界観を手に入れる。

たとえば山やビルの高層に登ったり、飛行機に乗って高い位置に行くと、自分たちが生存している場所を俯瞰して、神様の視点で物事を把握する事が出来るようになる。

また本やテレビ、ネットの情報などでも、自分の生活圏以外の世界を知る事が出来る。

それ以前までは自分が生存している範囲の情報までが世界で、それ以外は未知の領域として想像や憶測でしか理解する事が出来なかった。

ガンダムのように人類が宇宙という未知の領域に飛び出して生存するようになれば、人類の世界観は更に拡張する。

この拡張した世界観を生まれながらに持っているのがニュータイプだと、僕は想像した。

宇宙世紀。

この新しい暦をきっかけに、スペースコロニーに移住した人たちは、人類が地球で築いて来た愚かな歴史を意識的にリセットした。

そしてスペースコロニーで生まれた子供たちは、「地球を捨てた」あるいは「地球に捨てられた」親たちの、地球に対する複雑な気持ちを汲んで育っていく。

地球を懐かしの故郷のように親しみ、憧れる気持ちもあれば、地球を未だに人類の愚かな歴史と重力に縛られている古い星という、蔑みの感情なども同居している。

そんな複雑な感情がサイド3で暴発し、ジオン公国が誕生した。

アムロやカミーユを見ていると、ニュータイプは自分に備わっている特殊な能力を、他人と競ったり、争ったりする事のために使う事を本来は望んでいない。

高い共感能力ゆえに、彼らは自分の感情だけでなく、他人の感情も気になって仕方がない。

この気質は僕たちHSPアダルトチルドレン全般に見られる気質に近いものがある。

ニュータイプもアダルトチルドレンも、自分が傷つく事も、他人が傷つく事も極力避けて生きていきたい願っている。

不公平や不平等な出来事を見過ごせない生真面目さなんかもあり、我が強く、利他的でない者を心の底で憎んでいたりする。

それに加え、直感的な未来予測や、テレパシーのような広範囲に渡る共感能力を開花させてしまったのがニュータイプ。

そのニュータイプと旧人類の間に生じる能力差と意識の隔たりが、人類全体の未来にどんな影響を与えるのか?

僕はそれがすごく気になってガンダムにハマった。

ニュータイプが旧人類を牽引して共生を目指す世界の可能性もあれば、適者生存で旧人類が滅び、ニュータイプだけが新時代を築く世界の可能性もある。

または旧人類がニュータイプを危険分子として排除し、地球連邦が従来どおりに統治する世界の可能性も残されている。

ガンダムに登場する権力者、軍人、革命家たちの間で繰り広げられる、このニュータイプの存在を巡る思想の対立が見ていてとても面白い。

ただ僕が思うに、結局のところ戦争の大義名分は全て後付けで、権力者、軍人、革命家たちの本当の目的は、「自分の人生において有意義な何者かになる事」

それに尽きると思う。

ファーストガンダムから逆襲のシャアまでは、アムロとシャアを主軸に、男が少年から青年、青年から大人へ成長する過程が描かれている。

岡田斗司夫さんの解説によれば、男は取り返しのつかない事をしてしまった絶望感を背負って少年から青年になるものらしく、2人にとっては、親友だったガルマ・ザビへの裏切りやララァの戦死がそれにあたるのだろう。

僕はシャアが好きで、その理由は、シャアは自分自身のエゴイズムに対して自覚的で、誰よりも素直に見えるからだ。

シャアは父親であるジオン・ダイクンがザビ家に暗殺されなければ、自分が長男としてジオン公国の実権を握る役目を担うはずだった。

シャアの存在意義は既に家柄と血筋によって保障されていた。

だからシャアが「何者かになる」ためにやるべき事は明白で、父親を殺したザビ家に復讐し、父親の悲願でもあるジオン公国の自治権を地球連邦軍に承諾させる事。

そして自分自身のニュータイプとしての可能性を探る事。

その明確な目的と計画の前に偶然アムロが立ちはだかって来た。

物語を創作していると、物語で描かれる世界観と出来事は原作者の内面世界を投影したものである事に気づく。

作家性のある作品ほどそういうものだと思う。

ガンダムは富野さんが大人になる過程で体験した出来事や心情を、シャアとアムロの人格を借りて、壮大なスペースオペラとして表現したもの。

僕はそんな感じで鑑賞した。

そして冨野さんは、人類の歴史と自分の内面世界を探求した創作を通してニュータイプの出現を予見した。

ニュータイプを巡る人類の行く末。

それはどんな世界だろう?

僕は僕で想像しているニュータイプの未来がある。

その答えをハサウェイ・ノアの三部作で出してくれるのかはわからないけど、ガンダムの世界でもニュータイプを巡る未来の答えが出る事を期待して、楽しみに待っている。

いつも読んでくれてありがとう。







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