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アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』大人のいない社会

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あらすじ

西暦2000年9月13日に起きた大災害セカンドインパクトによって世界人口の半数が失われる。その15年後の西暦2015年、主人公である14歳の少年碇シンジは、別居していた父、国連直属の非公開組織・特務機関NERV(ネルフ)の総司令である碇ゲンドウから突然第3新東京市に呼び出され、巨大な汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン(EVA)初号機のパイロットとなって第3新東京市に襲来する謎の敵「使徒」と戦うことを命じられる。

監督:庵野秀明

年末年始の休みを使って、テレビ版エヴァンゲリオンを再試聴した。

初めて観た時はロボット物のアニメにしては不可解過ぎる設定とストーリーだと思った。

特に23話以降からの展開が混沌としていて、使徒の正体も「人類補完計画」の目的も曖昧なまま結末を迎えた感が拭えない。

ただ劇場版が完結し、再度このアニメを、ロボット物ではなく、登場人物や庵野監督自身の精神分析という視点で見るとすごく興味深くて、僕はテレビ版を見ながら、43歳になっても碇シンジにシンクロしてしまう自分は全然大人になってないんだな、と痛感した。

たぶん大人はエヴァを見ない。

大人にエヴァのような作品は必要なくて、意味もない。

エヴァの評価は様々だけど、エヴァに興味を持って楽しんでいる人はみんな子供なんだと思う。

俗にいうアダルトチルドレンとか、中二病とか呼ばれて、大人になった自覚がなく、体と頭ばかりが成長してしまった少年少女がエヴァを楽しんでいる。

庵野監督自身が14歳のままで、それこそ主人公の碇シンジのように「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!」と自分に発破をかけながら、この作品の完成を目指して、大人になろうとしていたようにも思える。

だからこの物語には真に大人と呼べるような人物がほとんど出て来ない。

ネルフにも第3新東京市の住人にも大人はいない。

成人して社会に出て、何かしらの仕事に従事して社会的責任を負う立場になっても、精神はみんな14歳で止まっているように見える。

エヴァの世界では社会的責任を負う立場にある大人たちがエヴァに乗れず、14歳の少年少女に人類の命運を託しているような異常事態が起きている。

現実社会を見渡しても、「大人」だと思える人には滅多に出会わない。

大人のふりをした、というか、仕方なく大人の役をやっている人たちばかりのように見える。

子供のままで社会に奉仕し、人類存続のために何かしら貢献している。

碇シンジが初めてエヴァの初号機に乗った時みたいに、出来るかどうかは関係なく、やりたいかやりたくないか?

そんな選択を迫られて、仕方なく大人の役を引き受けている。

真の大人なら当然の事として引き受けるのだろう。

でも僕たちアダルトチルドレンは、

両親に認めてもらえるなら

異性に褒めてもらえるなら

みたいに、何らかの条件付きじゃないと、大人の役なんか引き受ける気にならない。

たとえ良い成果を上げても、良い評価をもらえなければ自信がなくなり、途中で使命を投げ出したりする。

そして自分の人生もこの世界も、すべてが無意味、すべてが空虚に思えて来て、自分の世界に閉じ籠り、自分がこの世界に必要とされ、愛されている夢を見ようとする。

それで満足出来ないアダルトチルドレンは、無意味で空虚な現実にそっぽを向いて完全に引き籠るか、無意味で空虚な現実に牙を剥いて、自分が世界に必要とされ、愛されている夢を実現するため、大それた事をやろうとする。

政治家や革命家になって世の中を変えてやる!

科学者や起業家になって世の中を変えてやる!

そんな目標を掲げて自己実現しようとする。

「人類補完計画」

それは碇ゲンドウが大人になるために選んだ、自己実現の手段なんだと思う。

『エヴァンゲリオン限界心理分析』によると、碇ゲンドウは、ドイツ第三帝国の総統になったヒトラー同様、家庭において専制君主のようだった父のかわりに独裁者になり、無意識の反復強迫によって、家庭で受けた精神的外傷を全人類に転移しようとした。

人類補完計画は、「欠けた心の補完」、つまり人が心をもって生きているかぎりつきまとう欠落感、悩みをなくし永遠の安らぎを得ようというプロジェクトで、「できそこないの群体であるヒトを、完全な単体としての生物に人工進化させる」もの。

それは人類の進化に名を借りた一部の人間によって遂行される全人類の虐殺と同じ。

碇ゲンドウは人類補完計画によって親から受けた屈辱と痛みをなくすことができると信じていた。

人類補完計画によって解消しようという人間の心のすきまや弱さは、「弱くて無力な子ども」である碇ゲンドウ自身のことでもある。

そしてその傷つきやすく世界に対して閉塞的な危うさは息子の碇シンジにも連鎖して、彼が14歳でエヴァに乗り、使徒と戦って人類を救う使命を担う事で、シンジにも自己実現の機会が与えられた。

碇シンジや僕みたいなアダルトチルドレンはどんどん増え続けているから、将来的にはアダルトチルドレンがマジョリティになる社会が来る。

これは裏を返せば、無理して大人にならなくても生きて行ける社会になって来たという事でもあると思う。

それが良い事なのか悪い事なのかはわからないけど、僕は出来れば大人になりたいな、と思う。

「さよならすべてのエヴァンゲリオン」

この言葉は、エヴァを完成させてやっと大人になった庵野監督が、まだ大人になっていない僕たちアダルトチルドレンに向けたお別れの言葉のような気がして響いた。

置いてきぼりを食らって少し寂しかったりするけど、エヴァを通して少年が大人になるプロセスを見てきたわけだから、僕も大人になれると思う。

大人になるまで、今後もエヴァを楽しみたい!

いつも読んでくれてありがとう。

エヴァンゲリオン公式サイト







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